割り切り

亀井勝一郎氏の言葉にこんなものがある。

「割りきりとは、魂の弱さである」

経営をしていると色々な矛盾と対峙することがある。
子どもや人に関する仕事をしているとなおさらのことである。

たとえば、何かしらの善を求め行動すると何かしらの悪のようなものが生まれる。
良かれと思ってやったことも、時と場所を変えれば悪かったことにもなる。
福祉として取り組んだことが、商売という形で跳ね返ってくることもあり、逆に商売が福祉となることもある。

他にも人間模様ではより色々とある。

厳しいことを言うことがあるのだがそれは仏心であったりする。
優しさのようにみえて、それは厳しい現実を先送りして相手から逃げているだけというのもある。

つまり、一見誰しもが日常的に判断・決断する中に矛盾から生まれる精神的な葛藤がありどちらかに安易に割り切ろうとする精神が無意識に働く。
すると現実から逃避し、知らず知らずに安易な方へ判断を延期し割り切ることでその場をつなごうとするようになる。

子どもを商売の軸においての会社経営とは日々矛盾との対峙であり、福祉サービスとはその壮大な矛盾を胸に抱えながらどちらも併せ持つ覚悟がないと決断をすることができないのである。

以前、師匠はこの業界での将来へのビジョンを一つの「道」であると説いた。
一つの道を進むにあたり、大事なこと割り切らない思想を持つ事であると私は思う。

割り切らないという精神的な格闘を乗り越える勇気と覚悟があってこそはじめてこの業界で一つの道「ビジョン」を成し遂げることができるのだろうと思う。

「割り切りとは、魂の弱さである」

この言葉の深遠なる意味をもう一度考え直してみる機会になった。