まず心ありき

仕事をしていていつも大切に感じるのは、取り組む時の順番が特に重要であることがよく分かる。

料理でもそうだし、奉仕でもそう、どんなに拙い技術しかなくてもまず心を籠めて取り組む方が思いやりや愛で行動することができ、最終的には本物の技術まで高めていくことができる。

そしてその繰り返しの練磨により、本当にその心と技術、さらに行動がピタリと組み合わさった時、まるで何かの偉大な応援力をお借りした時のような感謝に包まれた一期一会の奇跡が起きるのであろうとも思う。

よく忙しい忙しいと常に心を使うことを避けている人がいる。

忙しいというのは何のためにやるのかということをいつまでも自分自身で掘り下げもせず、場当たり的に目の前のことだけに囚われて自分の技術技能のみで何かを遣ろうとすることに似ている。

何が本質なのか、何をしようとしているのか、それを自らの心で感じようとはせずに小手先の技術だけを頼れば変なミスはしないけれど心がないから仕事がまるで素人のような味気ないものになってしまう。

人は別に完璧なものを求めているのではなく、心を籠めて通じ合っているかどうかということをひとつひとつの作法の中で確認しあっているのであると私は思う。善い製品も、善いサービスも、善い対応も、心技体すべてを総合的に捉えて実感して満足感を得ているのである。

だからこそ主体となる人のその心がまず何を観ているのか、その心が思いやりであるのかが最終的には本物の自立した職業人としての技能や行動力、センスを育てているのであろうとも思う。

会社で言えば、お客様のことを真摯に共感し思いやる事、困っていることや悩んでいること、自分がお役に立ちたいと誠心誠意取り組むことが何よりもまずもっとも自分の役割、お役目を果たすということになっているのだと私は思う。

よく頭で聞いてすぐにわかった気になる人もいるけれど、頭で分かってしまうのは心で共感することをいつまでもしないからである。心で共感していれば、分からないことの方がいつまでも数段多くなるから注意深く聴けるようになる。

その分からないからこそ、大切にしたい、丁寧にしたい、きめ細かく注意深く配慮したいという気持ちになるのだろうと私は思う。

一流の仕事とされるのは、すべて心ありきである。

相手のことを自分の事のように思えるような日々の共感力を高めて育てていきたい。特に新入社員などは、心で感じることを頭で分かるよりも常に先にしていくことである。ホスピタリティを磨いていくのは、自分の志を何のためにお役に立てるのかを身近で実感していくところが初心や原点であることを忘れないことである。

世の中は、すぐに結果や理論、テクニックや方法論ばかりが蔓延っているけれどもっとそのものの心に寄り添い、いつも見守れるような優しい心をカグヤでは優先していきたいと思う。