仕事の質

人は人と一緒に仕事をしますが、その際に自分が遣りたい仕事をやるためのその本来の動機というものが一緒に働く人たちにとても大きな影響を与えているように思います。

その仕事のプロセスにおいて、雑でスピードが速いからいいのではなく、遅くても緻密で丁寧であればいいのではなく、その動機が一体どうなっているのかということを確かめるということはあまり議論されていないように思います。

そもそも仕事は本来、誰かのためにやることですから思いやりで行われるものです。誰もが何らかの役に立ちたいという動機があって、仕事に意味を持ち取り組む人にはどんな仕事にも誰かが関わっていることを知っています。しかし仕事が慣れてきたり没頭しすぎると周りが見えなくなってしまっていたりします。そうなると思いやりに欠けて周りとの軋轢をおこしてしまいます。そんな時はそもそも何のために仕事をするのかということを忘れないでいることのように思います。

初心を忘れず、どの仕事をやっている最中であっても決して何のためかを忘れない、つまり常に何のためかを心や腹の丹田に据え置き、その志や真心を維持しながら実践するとき、はじめて自他を倖せにするような速くて丁寧といった両輪が具有するような一流の仕事になるように思います。

そう考えてみると仕事の質というものは、その心構えに由るということなのでしょう。そして仕事の質を左右する責任とは、自分が何のためにそれをやるのかを知り、その意味を決して忘れていないで進めているときに周りにも伝わるものです。

片時も忘れずにどんなときにも自己内省を怠らず、無責任な仕事とは何か、私心でやっている仕事とは何か、我儘になっている仕事とは何か、と省みる実践。つまり克己復礼、そしてこの礼は禮ですから、仕事の真の豊かさもまたそこにあるということです。

周りの評価を気にしたり他人を変えようとばかりせず、常日頃自分自身が果たして自分に打ち克っているかを省みて自己中心的な自己満足に陥らないように私心と向き合い、みんなを慮って思いやりを忘れない実践を積み重ねていきたいと思います。