炭のチカラ③

今回の夏季実践休暇で炭を深めれば深めるほどに奥深く、炭が持つ多彩な効能には驚かされます。例えば、森や川を再生させるために用いられたり、生き物たちが回復するのを助けたり、循環が滞る場所に炭が入ることで循環の流れが活性化されていく姿には感動することばかりです。

特に炭と微生物がこんなにも深く関わっていることを知ると、発酵の持つ本質に近づいていく気がして本当に有難い気持ちになりました。本格的に発酵から学び直しをはじめて約4年、その道の中に炭との出会いがあったことでさらにこの発酵が愉しくなりました。

これは人生と同じで、一見、関係がないように見えてしまうことでも「道」であると実践を積み重ねれば、寄り道や道草の中で不思議な出会いに回り逢い、シンクロにてシティを感じることができるという御縁の仕合せと同じです。今では単に知識だけを幅広く持っていることばかりを楽しみ実践を怠っては道に気づかず、本来の実践の愉しみが分からない人が増えてきているように思います。

人間にとって何よりも大切なのは、道に入ることです。

その道に入るというのは、自らを磨きあげよう、そして自らを鍛えよう、自らを高めようといった、敢えて苦労を選んでも愉しみたいと実践することを決心することのように思います。生き方を観て尊敬する人に出会ったなら、そこには必ず何らかの道が存在します。その道を極めた人や達人に触れることで、実践人たちが道を愉しんでいる姿に憧れるのです。子ども心は憧れですから、憧れが続くというのは実践を怠らず取り組んでいることができるからなのでしょう。

私の場合はかんながらの道ですから自然を観るとなんでもすぐにワクワクしてしまいます。その道を辿る中で人生は彩られ、かつてない感動に出会い続けることができます。この発酵や炭もまさに自然の美が奏でる共生循環の世界そのものです。

話を戻せば、炭の微生物の発酵に江戸時代元禄年間に書かれた宮崎安貞による「農業全書」というものがあります。そこには炭の活用で「万の物を蒸し焼きにして、濃き肥と混ぜてねかせ、万の物に遣ると良い。とくに豆に良く効く。これを灰糞と言う」と書かれていました。

宮崎安貞は元和9年安芸の国(広島)に生まれ、父親は宮崎儀右ェ門という方で浅野藩主で山林奉公を勤めた方です。その安貞が25才のときに福岡藩主黒田忠之に200石で召し抱えられましたがやがて自ら官を辞し、九州を始め山陽道、近畿、伊勢、紀州の諸国を巡歴し各地の篤農家を訪ねその経験を聞いては種芸を学び農の集成と中国の農業書を読んで研究を積みあげました。その後、福岡の志摩郡女原に帰ってからは一農民となって自ら鋤鍬をとり、周りの人々と農事改良と、農民生活の向上に心魂を傾けた人物で人々からは「農聖」とも慕われていた方です。

この「農業全書」に記された灰糞はの効果は今では科学的に証明されており、炭や灰のチカラで田畑に自然の植物ホルモンや抗生物質をつくりだし土壌病害なども防いでくれることが分かってきています。ここからも先人たちの炭の活用はすべて発酵につながっているということが具体的な技術にも応用されているのがわかります。この農業全書もまた炭からいただいた御縁です。

今回も大変有意義な実践休暇になりました。実践できることが有難く、実践をさせていただける仕合せに感謝することばかりです。引き続き、この炭の持つ神秘を深めつつ、発酵の智慧を体験により学び直していきたいと思います。