地の利と地の理~相応の原理~

自然界にはその場所の配置によって土地の性質というものがあるように思います。東西南北という方角や方位というものは、四季があり、太陽が昇り沈むのも一定の方角から行われるものであり、水の流れ、風の流れ、そして生き物たちの生育環境の配置にいたるまでその方位方角と深く関わっているように思います。

例えば、古来の先人たちは都市を考える際は風水理論や陰陽道を意識したといいます。平城京や平安京なども四神相応の土地を考えて造設していったそうです。この四神相応(しじんそうおう)とは東西南北を司る4体の霊獣のことであり、その霊獣は自然形態の象徴とみなされます。東は「青龍」が治めて河川が龍とし、西は「白虎」で街道を、南の「朱雀」は海。北は「玄武」で山が象徴となります。

法隆寺大工棟梁の西岡常一さんの「木のいのち木のこころ」(新潮社)の中にある宮大工の口伝の中の一つにこの四神相応のことが書かれていました。

「四神というのは中国から伝わった四つの方位の神様。
青竜  季節は春 方位は東 の神様
朱雀  季節は夏 方位は南 の神様
白狐  季節は秋 方位は西 の神様
玄武  季節は冬 方位は北 の神様
これを地形で表すと、東の青竜には清流がなくてはならず、
南の朱雀は伽藍より一段と低く沼や沢がなくてはならない。
西の白狐には白道が走っていなければならず、
北の玄武には山丘が伽藍の背景になっていなければならない。
伽藍を建てるなら土地を選び、南に面し北を背にするような造営にしなさい。」

これはまさに地の利のことであり、神社仏閣は神聖な場所に建てることが如何に大切であるかということを表しています。この地の利というものは、自然界に棲まう健康健全な人間生活において大きな影響を与えているように思います。

作物がよく収穫できる場所なども、その相性というものがあります。陰に偏る生き物たちが好む地の利、陽に偏る生き物たちが好む地の利があります。これは家相でもいえることですが、ジメジメしたところには相応の生き物たちがそこに集まり生活をはじめます。また乾いた場所ではまた相応の生き物たちが生活しています。

方位方角というものは、自然の摂理であり、その自然をよく観察していた祖親たちはどのような配置でどのような方位にいることがもっとも地の理に沿っているか、自然循環を邪魔しないか、他の生命を活かし切るか、ということを観察したのかもしれません。

元来この四神相応は中国から由来したものですが、何千年も前から様々な検証を得て、実体験から効果があったものを子孫へ伝承した自然の智慧の一つです。

いくら都会に住んでコンクリートジャングルの中にいるような私たちでも、本来は自然の一部であることは間違いありません。自然の一部である私たちがいくら身勝手に自然と隔絶した都市を構造して東西南北や四季、地の理を無視したにせよ、必ず何らかの影響を持つのは地球の中であることが変わらないからです。

自然を身近に感じるために風水や家相を学ぶことは大切なことかもしれません。人間がそういうものを意識すれば、他の生き物たちもそれぞれの場所で活性化し、共生し貢献し助け合っていくこともできます。人は一人で生きてはいません、周りの中で生きる住まいを与えられて生きられる生き物です。自分たちだけや自分だけで生きているような勘違いをしないように常に四神相応のような大きな眼差しで地の理を学び直していきたいと思います。