和が宿る

古民家甦生を続けていく中で、古いものを磨き直し新しくし、さらに手作業手作りのものに入れ替えていくと落ち着いた空間が発生してきます。その空間に入ると、とても心穏やかになりなんともいえない安心感に包まれます。この空間に入ると落ち着くという感覚、これが日本の伝統的な「和」のことです。

和むというのは、心の作用を言います。そして心はそのものと人、人と人、すべてのものが相調和したときに空間に一切の邪魔が入らず無為自然になるのです。これは自然の中に入るのと同じで、あるべくしてありなるべくしてなる。日本の風土に沿って日本の伝統的なものに包まれたとき、私たちは心が安らぎ和むのです。

例えば、都会の喧騒と鉄筋コンクリートの壁の中でのむ一杯のお茶とこの日本の和の空間の中でのむ一杯のお茶は同じ味にはなりません。舌先三寸の味はどれも同じであっても、心が落ち着いて和むのはそのお茶によって周囲の空間に気付けるのであってお茶がそれをなしているのではありません。

私は茶道のことはよくわかりませんが、伝統的な自然な日本民家で鉄瓶でじっくりと沸かしたお茶の味わいは心がよく知っています。その心の落ち着きはすべて和からきているものです。この和とは、日本の道具を使えばいいのではなくそこに流れている暮らしや主人の精神、人と家と道具が見事に調和するときに出てくるものです。

空間とは呼んで字の如く、「空」の「間」です。

その間を如何に空にするか、そこに邪魔が入るような私欲や邪念を一切捨て去って真善美の徳を顕すこと。そういう空間にこそ場が生まれ和が宿るのです。

古民家甦生を通して磨かれるのはその和の精神、大和魂です。

引き続き子どもたちに和の精神、大和魂を伝承できるように真摯に「場」を磨き続けていきたいと思います。