心の余裕~聴福人の実践徳目~

人は相手の立場になってみることで初めて人の話を聴くことができるように思います。自分のことしかない視野や自分の価値観のみに囚われていたら、相手に心を寄せることができません。つまり人間は、本当の意味で心に余裕がなければ人の話をちゃんと聴くことができないのです。

例えば、怪我をしたり病気をしたり外傷がなくても心が深く傷ついている場合もあります。見た目がそんなに気にならなくても、その人の立場になってみると本当に辛く苦しいと感じることもあったりします。そういう時はいくら頭で考えて考えてみても本当にその人の立場になったわけではないのだから表面上のことしかわからないものです。

しかし心の余裕がある人は、たとえ自分がどのような状況にあったとしても相手の立場になって相手を思いやることができるのです。忙しい中でいくら相手の話を聴こうとしても聴けないのは、相手の立場になって思いやる余裕すらなくすほど自分のことだけで忙しくなるからです。自分自身を自意識で満たし、自分の思い通りにしようとすればするほど欲に呑まれ思いやりや心の余裕から遠ざかります。

人は日々に誰かと出会うのだからまず相手と接する前に、一度立ち止まってみて、もしも自分が相手が置かれた状況だったらと深く考えてみたり、自分にもわからない苦しみや葛藤、大変さがきっと相手にあるのだろうと深く思いやることで人は心の余裕を持てるようになります。

心の余裕は別に暇になれば持てるものではなく、考えたからと持てるものではありません。そこには自分というものを相手の立場に置いてみる訓練、もしくはもしも相手が自分だったらと置き換えてみる意識、そういう自分と相手が分かれていないといった自他一体の境地になってみてはじめて本当の真心や思いやりも発動していきます。

人間は過去の体験からの知識など思い込みで相手のことを勝手に認識してしまいますから、心が感じるよりも前に頭で過去の想定から相手のことを分かった気になってしまいます。そうすることで心は着いてこない状態になり余裕もなくなります。心が着いてこなければ、「聞く」ことはできても、「聴く」ことはできません。

聴福人は、まず自分を相手に置き換えて自分だったらと共感していく必要があります。そのうえで、しっかりと受け止めて傾聴し、その状況に一緒に寄り添い受容する、そのうえでお互いに出会ったことや共にあることに感謝していくというプロセスを経ていきます。

そうすることで心は救われ、心の余裕がまた広がり、思いやりと安心の間で穏やかな暮らしを積み重ね仕合せに生きていくことができるのです。

思いやりは、心の余裕ということです。そして心の余裕は、聴くことによって磨かれ高まっていくということです。

引き続き聴福人の実践を日々に重ね、子どもの憧れる生き方を貫いていきたいと思います。