記憶と思い出

人間には古来より今まで生きている中の記憶があります。幼少期の頃までには、それを覚えていても次第に自我が芽生えそういったものを忘れてしまうものです。何度も生まれ変わっても、先祖から連綿とつながった記憶は忘れられずに私たちの心の奥深くに眠っているものです。

時折、そのむかしの記憶を覚えている人に会うとまるで見てきたかのように鮮明にその映像を語られることがあります。そしてそれをなぜか懐かしいと思うのは、同じ記憶を共有しているからかもしれません。

そしてご縁が結ばれ記憶を辿りながら、ふと何かと繋がったりするとき何かを思い出すときがあります。不思議ですが私たちは誰しも記憶を持っているということをその時感じるのです。

人間は生まれた時が、ゼロで残りを足して人生を歩んでいくと思い込んでいることが多いものです。ですから記憶も同様に、後から増えていくことで過去を忘れていくようにできていると思っています。しかし本来は、足していく記憶と、引いていく記憶があるように記憶はその両面を同時進行で行っているとも言えます。

つまりは新しく体験して創り増やす記憶と、体験したものを元に思い出す記憶があるということです。記憶というものは、今の自分の背景を伝えてくるものです。だからこそ記憶を大切にして忘れたくない大切な思いは忘れないままに、新しい記憶を辿りながら自分が観たことがある懐かしい記憶を思い出すために心は動いていくように思います。

人間はあの世に持っていけるものは思い出だけという言葉があります。そしてアップルのスティーブジョブズもまた「私が勝ち取った多額の富は、私が死ぬ時に一緒に持っていけないが、愛は持っていける私が今、死と共に持っていけるのは、愛に溢れた思い出だけなのだ」と言って亡くなりました。

この「思い出」の大切さに気付いている人は、懐かしい記憶を思い出している人です。一度きりの人生で、どんな「思いを出すのか」、それが人間の一生が決まる大切な要素です。

記憶という思い出を大切にしながら、いつまでもその記憶を忘れないように思い出を守り続けていきたいと思います。