空き家問題と生き方

現在、日本では少子高齢化、人口減少化が進む中で空き家問題ということが発生しています。野村総合研究所NRIのデータによると「空き家」は2018年以降から急速に増え続けることが分かっています。具体的には現在は7件に1件の空き家ですが10年後の2028年には、現在の820万戸の2倍以上になり4件に1件が空き家という状態です。15年後の2033年には3件1件が空き家になると予想されています。

2015年に政府は「空き家対策特別措置法」を施行し、空き家の管理を怠ると罰金50万を課したり、特定空家等(倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にある空き家)になると税金を6倍課せられるようになりました。

しかしこれらはこれ以上空き家を放置しないための対処療法であり、空き家の本当の問題の根元的な解決は進みません。前の代が遺したツケをどのように私たちは清算し、子孫にツケを残さないで片付けていくことができるか。世の中は、ジワジワと浸潤していくことはあまり関心を持たず、目立った短期的で派手な問題ばかりが注目されるものです。しかしこの空き家問題はこの世代を生きる私たちには決して避けては通れない大きな問題なのです。

現在は、全国のあらゆる場所で老朽化したり廃屋化したりしている空き家を見かけるようになりました。私の郷里でも、明らかに人が住んでいないで瓦が落ちたり、窓が割れていたり、木が腐ったり、外観がボロボロなビルやアパートを見かけます。東京でも、集合住宅やタワーマンションなどの空き家が増えて管理費が減ることで修繕できないままに老朽化が進んでいるものも増えているといいます。もともと日本は高温多湿の自然環境ですから、風を通さなければ水が停滞しそこから腐敗して傷みを早めます。

これだけ空き家があっても、人はみんな新築の戸建て住宅を購入しようとします。リノベーションやリフォームをして住む家も少しは増えてきましたが、築50年を超えるような建物をリフォームして住むというケースはほとんどないといいます。「築年数が古い」ということが地震対策や風雨対策ができていないと理由などがあるといいます。

本来、古民家は200年、300年とあるようにそれだけの日本の自然環境の変化に適応してきた住宅です。しかし明治以降の特に昭和や平成の住宅は海外の簡易モデルで建てていますから30年~50年くらいしか住まない計算で建てているから仕方がないともいえます。

その頃は、人口増加で勢いがありましたからまた壊して建て替えればいいと思っていたのでしょうが人口減少で建て替えることもなくなってくるとこの空き家は誰が処理していけばいいのかという問題が出たのです。

空き家を片付けるにも大変な費用がかかります。またそこに住む人たちが今まで培ってきたまちづくりのデザインも崩れていきます。通りには、空き地や駐車場だらけで歯抜けのようになっていたり、太陽光パネルや古紙回収、コインランドリーや自販機などで溢れていてはとても住みたいと思うような町の景観ではありません。

ドイツなどでは町の景観を維持されていて通りも美しく保たれています。この町に住みたいと思うのも、そこに住んでいる人たちがデザインした暮らしを感じることができるからです。

空き家問題は、まちづくりの問題と直結しています。これは自分たちが住むまちをどのようにグランドデザインするか、それをそれぞれが考えて自分たちが責任をもって参画していく必要があります。私たちの世代は人の関係が希薄になり、地域のコミュニティも減退するなかで、自分の短期的な視野だけで一代限りの使い捨てで生きるのではなく、遠い未来の子孫たちや全体善のために長期的なビジョンを描いて味わい深くどう生きていけばいいか向き合っていく必要があります。

子どもたちに負のツケばかりを残さないで、子どもたちが安心して活躍できるものをたくさん譲り遺してあげたいと思います。そのためにも、恩や徳に報いる生き方を実践し伝承していきたいと思います。