技術と原点回帰

明治以前と明治以後で日本の文化は大きく変化しました。具体的には、それまでの物づくりなどの生産過程がすべて効率化され海外の技術を優先して古来からの伝統的なものを排除していったことが大きかったように思います。

海外の技術を最良とし、日本のそれまでの技術を否定する。このようにして進歩している海外の技術をスピーディに学ばせ取り入れたということです。そのことから、私たちは確かに短期間に海外の技術をものにしましたがその技術の欠点があることまで検討される期間もなく現代までそのまま続いてきているのです。

それが現代において多くの歪をつくり、本来の日本の風土や歴史、また文化とどうしても溶け込めないものが増えそのことから日本らしさというものも失われてきているとも言えます。世界では、それぞれの国で大切にされてきた技術や文化、そして物があります。そういうものが世界の中では特に引き立ち、その土地の風土と一体になって世界の人たちを感動させ、さらにその技術が応用され新しい世界の発明に活かされていきます。

西洋の技術が進んでいるわけではなく、世界でもっとも秀逸なものではないと気づくところから意識を換え、そして古来から日本の風土で養われてきた日本の技術の中に私たちの先祖が編み出した智慧があることを学ぶことこそこれから多様化していく世界の中で必要な技術の基本になると私は思います。

そのためには、日本の古来の技術をもう一度学び直す必要があります。そして同時に歴史を学び直す必要があります。明治以前までどのような暮らしをしてきたか、そしてどのようなプロセスでモノづくりをしてきたか、どのような原材料を用い、どのような環境、どのような姿勢、そういったものをもう一度原点回帰し甦生してみるところからはじめるといいのです。

元の状態がわかってこそ、原点を知り、元が何かがわかってこそ基本を知ります。

私が取り組んでいる様々なことは、すべてこのシンプルさの追求であり原点回帰する中にあるフレッシュさの追求でもあります。現代のように複雑になったものを専門分野に分けて、無理に高めるのではなく本来の姿に近づけようとすることの方がより高度になっているものです。

自分の道を貫いて子どもたちに確かな伝承を行っていきたいと思います。