藁葺古民家の甦生~白蟻被害~

現在、藁ぶきの古民家を甦生していますが大半の木材が白蟻に食べられていてとても難儀して工事を進めています。外から見ても、そこまでは感じなかったのですが室内のクロスや板を剥いだら家中のほとんどに白蟻による食害がありました。

十数年の空き家で湿度が高く、人が住んでいないため窓を開けることもなく風通しの悪い家に白蟻が来ればほぼ家は壊れてしまいます。まさかと思うような立派な柱や梁までもスカスカになるほどに白蟻は木材を食べつくしていました。

この白蟻は3億年以上前から地球にいることが分かっており現在、世界で確認されているだけでも2,000種類以上ものシロアリが存在するといわれます。その中で日本に生息するシロアリは、およそ22種前後だと言われます。その中でも家屋に大きな被害をもたらすシロアリは、ヤマトシロアリやイエシロアリです。

ヤマトシロアリは、日本でもっとも生息数が多く家のシロアリ被害の80~90%はヤマトシロアリだと言われます。このヤマトシロアリは土壌性の白蟻で土の中や湿った環境が好きで被害は床下に多く生息しています。特徴として巣を作る能力がなく餌場にそのまま住み着き、天井まで被害が及ぶこともあるといいます。

またイエシロアリは木造の建物だけでなく、コンクリート造の建造物、立木に対しても被害があります。特徴として食害に遭っている場所に巣を作ることはなく、別の場所に大きな巣を形成するといいます。そして一つの巣には100万匹以上にのものもできるとし、被害速度が甚大だといいます。

まだ専門家に見てもらってみませんが、見るからにイエシロアリの食害ではないかと思えるものです。立ち木、梁、その大きなところをあちこち食べられていました。

この白蟻の餌は、木材のセルロースです。通常は分解できない木材のセルロースをお腹の中の微生物で分解してもらい栄養を確保しています。他にもこのセルロースを栄養源として利用する動物に牛がいます。牛は胃のなかにいる微生物がセルロースを糖に分解して栄養にします。こうやって共生関係を維持することで通常は食べれないものを分解して栄養をお互いに与え合っているのです。

白蟻の弱点は、紫外線や乾燥になります。水分がなければ、生息環境に適していませんから繁殖することが難しくなります。家を手入れしていてわかるのは、カビが生えないような環境が重要なのです。

高温多湿の日本の気候風土だからこそ、風を通し、また火を焚き水分を除き、煙で燻して木材が腐食しないようにする。これらのことで、本来は家の中に湿気がたまらずにカビないように工夫したのです。

甦生するのも大変ですが、これからまた白蟻が来ないように予防することも必要です。期間が短いですが、どこも手を抜けませんから日本の未来の甦生、子どもたちに引き継いでいく文化のためにも、丁寧に丹誠を籠めて取り組んでいきたいと思います。