変化の要諦

人は誰にしろ自分の常識というものを持っています。それを価値観とも言いますが、自分の与えられた環境が当然としてそれを常識にしてしまうものです。またその人がそれまで育ってきた環境によって常識はより強く形成され、自分の見ている世界や考え方が正しいと思い込んでしまうものです。

そうやって思い込んでしまった常識は、環境が変わると取り払われるものもありますが思い込みが強い場合は無理矢理に自分の常識に当てはめようとしてしまうものです。そうすると、本来の姿も湾曲して理解したり、自分の常識と異なるものを批判したり否定したり、さらには常識に従うように強制したりするものです。

人間関係において意見がかみ合わず折り合いがつかないのもまた、自分の常識を捨てられず手放せなせず、お互いに思い込みで話が平行線のままぶつかり合うことのほとんどがこの常識を毀せないことが理由です。

常識が毀せないというのは、自分の価値観から外に出れないということでもあります。自分がこうあるべきと思い込んだり、誰かや環境にそうあるべきと思い込んでしまうとそれを当然であると無意識にそれを正当化してしまいます。そうやって一度正当化したものは、考えられることもなく当たり前のことですから間違っているかどうかなども疑問にも思わないのです。

本来、正しいかどうかや常識であるかどうかよりも大切なものが本質です。何のためにやるのかと、目的に応じて優先順位を定めていかなければ理に適いません。この理とはあるがままの実相を理解する力であり、理由や意味を常識に囚われずに素直に見極めることができる力でもあります。

常識に囚われたり自分の思い込みが強い人は、自分の価値観の視野から抜け出しませんから必然的に視野が狭くなります。その視野は、自分の殻を破れないという言い方をしたり、自分の思い込みの外には出ようとはしないとも言えます。行動範囲も視野に応じて狭くなり、創意工夫もまたマンネリ化して変化することができなくなります。

如何に自分の常識や価値観を毀していくか、そのためにはあるがままに素直に人の話が聴けなければなりません。人の話を聴く中で、鵜呑みにするのではなく相手の言葉に一理あることを学ぶ必要があります。そうするためには、その意味する理由、つまりは理念や目的を確認し、その本質に対して自分の価値観や常識を毀し続けていく変化を求めていく必要があります。

そしてそれは新しい自分の発見をし、新しい常識を創り続けていくことでもあります。自分の常識に世界を従わせようと意固地になり頑張るよりも、自分の方を新しい常識に合わせて変えていけばいいというのが変化のコツです。

そして変化のコツは、如何にその新しい自分になっていくのを楽しむか、古い自分を毀し、新しい自分に出会い続けていくかという自分の視野を広めて価値観を柔軟にしていくプロセスをたくさん持つということです。

一生の中で、狭い視野の中で居続けているとそのうち周りの環境の変化に取り残されていきます。頑なに自分の価値観や常識から抜け出さないように努力するよりは、思い切って自分の価値観よりも大切な理念や目的に向かって自分を変え続けていこうと思う方が楽しい変化に富んだ豊かで充実した日々が過ごせるように思います。

人は自分の価値観の器をどれだけ大きくできるか、如何に柔軟に自分を変え続けるかで人生の歩み方が変わります。もっとお役に立つようにと、もっとみんなの力になるようにと、目的や原点に対してサラリと変われる人はいつも本質的ですし自然体です。

引き続き、子どものためにせっかく夢に向かって挑戦していくのだから楽しく豊かに変化の日々を味わい尽くしていきたいと思います。

  1. コメント

    「自分の考え方や価値観」で世の中を見ることの弊害のひとつは、その「価値観で、人や社会を裁く」ということです。この「裁く」という視点が、「自己の正しさ」にこだわり、「自分の未熟さや間違い」に気づかなくなる要因ではないでしょうか。「自分の都合」や「自分にとっての正邪」ではなく、「自然の理に順応した素直な姿」であるかどうか?!そこを見失わないように注意したいと思います。

  2. コメント

    他の人の話を聞くことで、そういう考え方もあるのかとハッとすることがあります。特に同じ体験をして気づきを共有する際には、このことを強く感じます。自分、自分と自分の方ばかりに関心を向けず、もっと広い世界が拡がり、面白い世界を見ていきたいと思います。

  3. コメント

    自分自身を見ると本質を語る怖さを感じます。本質っぽい事を語れても、本質であるか、掴んでいるかは別のように感じ、自分の体験に無いものは語らず、と注意しても体験したものが本質とは限らないような怖さを感じます。本質とは、自分と相手の間、対話の中にあるものなのかも知れません。そうだとすると、本質は毎回変わる事になりそうです。どちらにせよ、今の自分では頭で考えていてもわかるものでは無いので、傾聴を大切にしていきたいと思います。

  4. コメント

    先日、一円対話で「保育者なってよかったこと」を話してもらいました。その中に「何もない、でも何度も出たり入ったりしながらそれでも他の職種には就かず結局は保育士に戻って来ているから、、この仕事が好きなんだと思います」と話されていました。本心と価値観の狭間で葛藤されてきたここ数年なのかもしれませんが、それもまた大事なプロセスとなるように、また同じ職場の仲間の声を聴くことを通して、本心から「保育者になってよかったこと」が話せるようになれるよう、同じ気持ちで研修に臨ませていただきたいと思います。

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