ボタを拾う

昨日は知人と一緒に、郷里のボタ山周辺で石炭を拾ってみました。石炭とは、数億年前の植物が完全に腐敗分解する前に地中に埋もれ、そこで長い期間地熱や地圧を受けて石炭化したことにより生成した物質の総称のことをいいます。

今では見たことも触ったこともない子どもたちも増えていますが、少し以前まではこの石炭が燃料やエネルギーとして私たちの近代化の発展を支えていた材料でした。石油も化石燃料ですが、この石炭もまた化石燃料です。豊かな湿地帯や水辺、砂や泥が多いところに巨大な森があったところから石炭は出てきます。かつてここ筑豊一帯は、大きな森に覆われていたことが分かっています。

そしてこの筑豊にはボタ山というものがあります。石炭でも燃えなくて使い道がないものを炭鉱夫はボタ(捨石)と呼び、それを捨てたところが山のようになっていることから名づけられました。このボタ山は、炭鉱閉山後は自治体から「負の遺産」として位置づけられることが多く石炭産業に代わる産業として炭鉱跡地に工業団地を造成したり、最近ではソーラーパネルを設置したりと急速に数が減ってきています。同時に日本の近代化を支えた石炭産業の象徴としてボタ山を恒久的に残し、維持管理していこうとする動きも出始めて歴史遺産として遺していこうという活動もあります。

郷里には、優美な美しさから「筑豊富士」と呼ばれる日本最大級のボタ山があります。これは大正7年から集積され始め、昭和40年の閉山までに10tトラック70万台分がたまっていきました。なんと高さ141メートル、敷地面積は22.4ヘクタールあります。

40年以上前に使われなくなったボタ山も、時代の流れと共に子どもたちには忘れ去られていきます。歴史というものは、学び直すことと価値を再発掘することでこれから生きる私たちに風土の大切な教えとして発展を約束してくれるものでした。なんでも均一化し、平均化していく世の中で、如何に風土の個性や歴史の価値、また文化の智慧を継承していくかは今の大人たちの課題です。

色々なご縁を味わいながら、歴史を学び直し、風土の魅力を再発見し、子どもたちに風土とは何か、文化とは何かを復古創新し、伝承していきたいと思います。

 

  1. コメント

    「筑豊富士」というボタ山を見ると、そのスケールに驚きます。単にここで石炭が掘られたというだけでなく、「炭鉱の町」であったということ、そういう時代が存在したという確かな歴史を感じます。さらに、そこに木が生えて山になっているのにも驚きます。また、こうした燃料を、地球が創り出す不思議さにも改めて驚きます。幸いにも、現在残っているわけですから、うまく伝えていけるようにしたいものです。

  2. コメント

    豊を築くで「筑豊」。とても響きのいい地名だと感じます。簡単便利になる中で何かを教えてくれる象徴でもあるかのように聳え立っていると思うと、決して負の遺産ではなく今の時代こそ考えるべきことなのだと思います。燃えるような熱量、率先して動く姿には学ぶことばかりです。豊かさを築いていけるよう取り組んでいきたいと思います。

  3. コメント

    先日のブレスト以来、今まで価値がないと思われていたものや不便と思われていたものの中にある本当の豊かさや価値というものを見つけていくという考え方の大切さを学びました。しかし、その大切さは理解できたものの、自分の頭がそれを変換できるかというとまだまだです。しかし、お客様との関わり方や提案の仕方、つなぎ方など、少しずつですが、着実に暮らしや働き方も変わってきているのを感じます。人がボタと思うものに疑問を持って見つめていきたいと思います。

  4. コメント

    負の遺産と思われている石炭の価値を再発見し、復古創新して現代に甦らせることがこの地域に再び情熱の炎をともすことになることを思うと、その可能性に魅せられるものがあります。同じように古民家甦生、暮らしの再生もまたボタを拾うかのように傍からは見えるかもしれませんが、これが日本を再び甦らせていくものだと、同じ繋がりを観て臨んでいきたいと思います。

  5. コメント

    この旅は、お呼びいただきほんとうにありがとうございました。今、一億年の樹石(きせき)を研いで書くボタ書、ボタ絵の時間を楽しんでいます。太古の時間を感じさせてくれる悠久の茶黒が溶け出してきます。なんともいえない風合いです。一億年もの永きに渡り封印されている太古の記憶(色)を出すには、触れるには、平な一面をひたすら磨き研ぎ通す作業から。はじめはぽろぽろしますが、しばらくすると上質のねっとりとした茶黒が抽出されます。太古のキセキは、貝磨きの貝のように水にちょこんと浸し、貝の仕上げヤスリを貝磨木の上に置き、書道の墨研ぎの要領で研ぎだすです。筑豊みがき。多くの皆さんに楽しんでほしいと感じています。一億年の情熱。筑豊発世界。まずは聴福庵発ボタリバ-ス。CO2は出さんけん。情熱燃やすボタ作品たちに出逢えますように。

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