空氣の本質~元氣な暮らし~

人間は空調に慣れてしまうと空気の流れや新鮮さなどを感じなくなりますが、むかしの古民家に住んでみると風が縦に流れているのを感じ澱みのない新鮮な空気の美味しさを味わえるものです。家の中では囲炉裏をはじめ、火鉢などを炭を熾してお茶を飲みますがその空気も床下から天井の屋根へと流れていく空気によって常に浄化されていきます。

以前、新潟のとある古民家宿泊施設に泊まったときそこは空調設備が整い現代のサッシの窓で厳重に閉め切られていたのですが、囲炉裏で火を熾したらすぐに一酸化炭素中毒の症状が出たことがありました。現代の住宅では危ないからと決して閉め切ることがないのですがつい古民家だから大丈夫だろうと安心していたのが原因でした。古い家でも、現代風になっているところは空気が循環していないのだなと改めてむかしの家の智慧を感じる善い体験になりました。

人間は空気を吸っていかなければ生きてはいけません。空気の中から水分を吸収したり、目には観えない様々ないのちのエネルギーを得ています。森林浴なども空気の中に入っている様々なものを吸収して心身ともに癒されていくのです。その空気が環境汚染によって汚れており、都市ではなお空気は汚れますから健康を害しているのは当然とも言えます。

以前、「医師が薦める本物の健康住宅」という記事を読んだことがあります。そこに小児科医の真弓定男院長の記事に「食事と空気を昔に戻せば、子どもはみんな元気になる」というものが書かれていました。

「特に、みなさんが普段何気なく吸っている空気の問題は重要です。何より気をつけないといけないのは、冷暖房で温度調節された空気です。人間は25日間、何も食べなくても水さえあれば生きていけます。その水も5日間程度なら飲まなくても大丈夫。でも、5分間呼吸をしなければあっという間に死んでしまいます。それほど空気は大切なものです。ところが、この空気をおざなりにしている人が非常に多いのです。
町中の空気より、自然な空気のほうが体にいいことは誰でも知っていること。それなのに、冷暖房や加湿器を効かせた室内で、一年中同じ温度、湿度の中にいるのは、あまりにも不自然だとは思いませんか?体には、もともと温度調整機能が備わっています。気温が高ければ自動的に毛穴を開いて汗を出し、逆に気温が低ければ毛穴を閉じて体を震わせ、熱を生み出す。そうやって体温を一定に保っているにもかかわらず、機械によって体の状態を保とうとすれば、体本来の機能が失われていくのは当たり前です。」

現在、東京では総合空調のビルの中で一日を過ごすことがあります。田舎で自然農や古民家で暮らしているなかで都会の生活に戻るとあっという間に皮膚や疲れが溜まっていくのを感じます。もちろん、病院の入院のように病気の時は回復に役立つのですが健康な時にはかえって不健康になるという具合に体温調節の機能などが働かなくなるのを自分の体験からも感じます。

田舎での体の活き活きした強さは、自然の中で五感が働き躍動することで得られる元氣です。都会は体はあまり使わず、頭ばかりを使うので五感よりも脳さえ動けばいいのかもしれません。しかしその脳も、便利すぎる都会の生活の中で空気や電磁波、食事によって働きが減退しているのも感じます。

さらに真弓先生は、「本来、外気と室内の温度差は、5℃以上あってはいけません。できるだけ外と近い空気を吸う。冬でも薄着の習慣をつける。それが子どもの健康を守る大事な秘訣です。」といいます。

自分の体をあまり甘やかさずに、少し厳しくすることで本来備わっている力を発揮させるようにする。健康を守るというのは、今の時代では環境に甘えずに自律して自立する生活習慣を身に着けるということかもしれません。

最後に、「本物の家」についてこう語られています。

「通気性のいい家とは、家の中の風が縦に吹く家のこと。昔はどの家にも必ず縁の下がありましたが、床下の空気が畳を通して1階に上がり、格子状の天井を通して2階へ行き、その空気が瓦屋根を通って外へ行く。昔ながらの木造旅館などがそのいいお手本です。すぐに新しい家を建てることができないという方は、窓を開ける習慣をつけましょう。外の空気となじませるだけでも違います。建物の空気を大事にすれば、健康面だけでなく、心ものびのび育つはずですよ。」

むかしの家にすれば、本物の家になるという言葉はまさに本質だと思います。

先人たちは、この土地の風土の中で私たちよりもずっと長い間、暮らしを営んできました。その中で得た住宅や家の智慧は、私たちが健やかに安心して健康に生きていくために創意工夫された努力の結晶とも言えます。

それを外来の異なる風土から入ってきた建物や家に住み、その翳った分を加工して乗り越えるのもそろそろ限界に来ているように思います。環境汚染が進み、気候変動やあらゆる資源が激減する中で、そんな遠くない未来に私たちは便利さや快適さを見直してでも健康で長生きし、安らかに豊かに暮らす方を選択することになると思います。

その時のためにも、先人の智慧を伝承することは今の時代を生きる世代の大切な使命です。引き続き、子ども第一義を実践し「本物」を譲り遺すために自立と自律を実践して継続継承していきたいと思います。

 

  1. コメント

    会社から帰宅し家に帰って来ると、熱がこもった部屋は空気も流れず、もわっとした空間になっています。部屋が暑くてどうしてもエアコンを入れていますが、外と部屋の温度を極力差がないようにしたり、扇風機も併用するなどしていますが、自然の空気には到底敵うことはありません。目には見えませんが、大切なものがえることを忘れずにいたいと思います。

  2. コメント

    田舎暮らしをしていると、日常の「生活温度」が他とは違うようです。新幹線も企業も、夏場は寒過ぎ、冬場は暑過ぎます。空調が身体に合わないという個人的な理由もあるでしょうが、やはり「空気の流れ」も大きく影響しているでしょう。「窓が開かない」というだけでも違和感があります。外気と温度差があり過ぎるのは、「異空間」であり、風土に馴染んでいません。「風が通る」というその原点の重要性を改めて感じます。

  3. コメント

    気密性の高い家では残念なことに煙草の煙でさえ外へ出ていきません。副流煙が体に悪いことは誰でも感じるものですが、温度や湿度が管理された空気は見た目は普通でも実はその煙と同じくらい体に影響があるものとはまさか考えないように思います。全身にヤケドを追うと皮膚で呼吸が出来なくて亡くなると言われますが、家も同じく生きものとして観て呼吸しているという感覚。呼吸という事の深さが感じられるお話です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です