真心と至誠

人と人との間の関係において、人間は頭で考えることと、真心で行動することを勘違いしてしまうと本質から乖離してしまうものです。本質を守るためには考えるか真心かという二者択一ではなく、常に真心を用いながら生活しその中で考えを巡らせていくという心身統一が必要になります。

この心身統一とは、理想と現実の統一とも言ってもよく、自分の人生でどう生きるかという生き方と、同時にどのように創意工夫して初心を保つかという知恵の活用です。

剣・禅・書の達人と言われた幕末から明治の武人に山岡鉄舟がいます。この人物はまさに、その心身統一に生きた真心の人だったように思います。江戸の無血開城もこの人物無しではありえなかったことですし、明治天皇の教育指導者としてもその後に大きな影響を与えます。山岡鉄舟が遺した言葉にこういうものがあります。

「まこころの ひとつ心の こころより 萬のことは なり出にけむ」

意訳ですが、「心を一つにすれば真心が発動し、すべてのことはそれによってのみ成り立っていくんだよと。」つまりは、自分の心の声に従って活動することで真心のままになりそのことがすべての出来事と一体になって活動していくのだという意味です。

人は頭で考えたことを心の声だと勘違いします。我が強く自分の思い通りにしようと思うばかり、我欲から出た声も心の声と思い込んだりもします。心の声を聴くというのは、我欲に呑まれないように常に真心のままに生きる実践を行っていくということです。

例えば、「思いやり」を持ち続けることも真心の発動です。頭で考えた思いやり風や真心風ではなく、心を寄せていく思いやりや真心を実践していくことです。人間は、相手の立場に身を置き、心情に寄り添って一緒に事物に傾聴し共感し受容していくのなら、自然に心が発動していきます。心は、常に全体を捉えておりその全体の中には自他の違いがありません。

もしもあなたが私なら、私があなたならと自他一体なのです。それを維持するには、計算から入るのではなく心から思いやる澄んだ精神が必要です。心を研ぎ澄ましていくというのは、山岡鉄舟のように自分の中に雑念や妄念、我欲や計算、保身などが邪魔しないように真心で心を大きくしていく修養を行うということかもしれません。

山岡鉄舟の剣の極意にはこう記されます。

「無刀とは、心の外に、刀が無いこと。敵と相対するとき、刀に拠ることなく、心を以って心を打つ、これを無刀という。」

「宇宙と自分は、そもそも一体であり、当然の帰結として、人々は平等である。天地同根、万物一体の道理を悟ることで、生死の問題を越え、与えられた責務を果し、正しい方法に従って、衆生済度の為に尽くす。」

「剣法を学ぶ所以は、ひとえに心胆練磨。もって、天地と同根一体の理を果たして、釈然たる境に、到達せんとするにあるのみ。」

心胆錬磨して一体何を目指したか、真心一つ、至誠こそその初心であることが分かります。

一日一日を過ごし内省し振り返る際に、もっとも大切なのは頭で考えることよりも、どれだけ心を使ったか、どれだけ心に従ったかという日々の心身錬磨が出てくる未来を変えていくのでしょう。

真心と至誠から常に自分を使い切っていきたいと思います。

  1. コメント

    「至誠天に通ず」と言いますが、「至誠」とは、「絶対的なまごころ」です。修行の過程で陥りやすいのは、「相対的な心」です。すなわち、「相手次第、状況次第で相対的に自分の心の様子が変わる」ということです。「絶対」とは、「人を相手にするのではなく、天を相手にすること」で磨かれると言われます。「心の使い方」を勝手に調整しないように注意したいと思います。

  2. コメント

    心から動いている時、頭で考えている時、どうして同じ自分のはずなのに、行動が変わるのだろうと思います。他の人の行動を見ていても、誰かのための行いは見ていても嬉しく、自分も真似をしていきたいと感じさせてくれます。人の長所を見つけていくように、自分がしてもらって嬉しかったように人のために尽くす生き方を目指していきたいと思います。

  3. コメント

    合理的に計画された方法論によって人間の持つ即興性は窒息してしまい「量」的には目標を達成できても「質」的には「死んだもの」が生み出されてしまう。先日の記事は量を頭、質を心と置き換えられるように思え、折角の行動が心無いものになってしまうということはよくあることのように感じます。子どもの行いが大人の考える以上の意味があるように、純粋な真心からの行いを大事にしていきたいと思います。

  4. コメント

    この世界は一対一だけで成り立ってはいません。全ては全てと交わっています。真心だけで相手に何かをすれば、その何かを行った事による全てに対する影響も決まります。一対一では良かった事も、全てを視野に入れればそれではいけない場合も出てきます。それを見るためには全てを視野に入れて視野に入れず考える必要があります。考えに囚われてはいけませんが、考えを疎かにすれば、例え真心があっても巧くいかなくなるのです。

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