菜の花の力

この時期の室礼で用いるお花はほとんどが菜の花になります。菜の花といっても、茎の大きいものは菜の花ですが細いものはからし菜になります。私は高菜も大根も育てていますから、菜の花といってもその形状も異なりますし色合いも異なります。

菜の花はアブラナ科のアブラナ属になりますが種類は豊富で、一般的に知っている野菜だけでもキャベツ、芽キャベツ、ダイコン、小松菜、ブロッコリー、白菜(ハクサイ)、チンゲンサイ、カリフラワー、ケール、カラシナ、カブなどがあると思います。これらの花はすべて菜の花と呼んでいます。

またこのアブラナ科の油も、菜の花の種から油がとれるということもあります。油が今のように当たり前になかった時代、この菜の花から抽出できる油は大変重宝されました。

江戸時代の行燈はこの菜種油を使っていたといいますから本当に貴重な油だったのでしょう。二宮尊徳が、幼少期に菜種を荒れ地に蒔いてそれを収穫して夜学の油にしたことは有名です。私たちは今は菜の花をみて油を取ろうとはなかなか思わないと思いますが、本来はどの植物や野菜も食べるだけでなく見立て次第で様々な活用をすることができます。

私は先祖に菅原道真公がいますから命日の頃は梅と一緒にこの菜の花を祀ります。これは東京の亀戸天神でも行われていますが、なたねがなだめにもなるといい供養花として活用しています。同時に、梅の清々しさと合わせて菜の花の明るさと希望が満ちている姿が天神様を彷彿させるからです。

明るく清々しい姿はまさに子どもの元氣そのもので、春爛漫の希望に溢れています。季節季節にその時機にもっとも相応しい花が咲きますが、私たちはその時機に相応しいことを直観しているものです。

これは長い年月をかけて、その季節の感性や感情を自然と共に私たちも影響をいただいているということです。まもなく桜が開花しますが、まさに山から田へと風が吹いてきて夏に向けて勢いづいていきます。

長い冬が過ぎて春の滋味が心身に沁みわたります。新しい季節を新しい取り組みを味わいながら進めていきたいと思います。

  1. コメント

    「持ち越し苦労」「取り越し苦労」という言葉がありますが、過去をいつまでも引きずり、未来を不安がって「今を生きていない」と、風の変化にも季節の移ろいにも気づかずに一人苦しんでいたりします。自然は常に「今が何をするときか」を教えてくれますが、それは同時に「励まし」であったりもします。そして、素直さ、潔さ、勇気の出し方、何があろうと決して「希望」を失わない生き方を教えてくれているようです。

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