自然の智慧を活かす

今度の徳積カフェの内装は、すべて古材を活用してあらゆる時代物の建具を組み合わせて配置します。また、外壁には焼杉板を一枚一枚焼いて創り上げ、仕上げは“鎧張り”を行います。

この鎧張りは木造民家の外壁に用いられる伝統的な張り方で、まさに鎧のように板を重ねていく工法です。とくに雨の多い地域に多く見られる方法でしたが板の隙間から風が吹き込むことがなく、雨も全て下へ流れ落ちる仕組みになっています。具体的には柱の間隔の長さに調整した板材を、下から上に順々に重ねるように、釘で打ち付けていきます。

焼杉というのは、耐久性を増すために、杉板の表面を焼き焦がし炭素層を人為的に形成したもので別名で焼板とも言います。これは調べると滋賀県より西の地域で使用される伝統技法で、外壁の下見板や土中に埋まる土留め板などに用いられています。なぜ西日本だけなのかの理由はいまだにわかっていないともいいます。

塗料で塗装するのではなく、焼いて耐久性を上げるという発想。これは自然を観察しながら焼いた板がなかなか腐らないことに注目して発明されたようにも思います。

この鎧張りも焼杉も、自然の法則や摂理を上手く活用したものです。今回の徳積カフェのコンセプトには徳を活かすというものもあります。万物の徳を活かすというのは、自然の理法に従うということでもあります。

不自然に人間の都合で建てる建物ではなく、まさに自然の仕組みをよく観察してもっとも理に適ったものにしていくということ。また自然物を用いて、できる限り加工していない自然のものを活かすということ。

まさに「あるものを活かす」というところに自然の智慧は入っています。

子どもたちに自然の智慧を示しつつ、自然の沿った生き方を伝承していきたいと思います。

  1. コメント

    「注意深き観察者となって世上を見渡すことは、最良の教えを得る道である」と幸田露伴は言いましたが、先人の「観察力」「観察眼」の鋭さには本当に驚かされます。それは、後世の「科学の目」を大きく上回っています。このような「自然」のなかに秘められた豊かな智慧を、人間はどこまで引き出すことができるか?!「分析」からではなく「観察」によって学ぶという「暮らしに根付いた人間力」をもう一度鍛え直したいものです。

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