故郷~初心の拠所~

人には故郷があるように、人の心にも故郷があるように思います。

先日、ある学校方々と面談をする中で「子どもたちがまたいつか帰ってこれるような学校にしたい」という言葉を何度も聴きました。そこには、我が子のように思い子どもを見つめる暖かい眼差しも同時に実感しました。

子どもにとっては未来への一つの通過点であったにせよ、そこを起点にして人生が強くなったり人生が豊かになること、生きていく上での大切な節目になることを祈り学校は存在するのかもしれません。

そもそも故郷というのはその人の風土や心の初心であり原点です。

その原点に帰ろうと思えるのは、そこで暮らした善き思い出を頼りに世の中へ羽ばたいていこうとする心境でもあろうと思います。田舎から都会に出て、社會の中で自分らしく自分の役割を全うする。その中においては様々な困難や試練、あるいは倖せや奇跡にめぐり会うのでしょう。

そんな時、ふと今の自分があるのは何があったからだろうと立ち止まるとき原風景が顕れるのです。それを心の原風景といってもいいかもしれません。愉しかった思い出、幸せだった仲間や先生たちとの邂逅、その人を支えるのはその人が信じ合っている家族や仲間と暮らした物語です。

心の強さというのは肉体とは異なり、単に厳しくすれば強くなるものではありません。人からの思いやりや真心、朋との信頼、志を歩む方々の姿、そういうものを一緒に歩んだ経験が心を強くしていきます。

その機会をどれだけ沢山の用意できるか、此処に居ていい、此処が居場所であるという体験をその子どもがどれだけ実感できるかに由るように思うのです。

人生は旅路です。

旅は元々居た場所に戻って来るからこそ楽しいものです。その元々の場所こそが故郷ということでしょう。その人が人間として如何なる初心を持つか、それは周りの大人たちの生き方に習って学ぶように私は思います。

卒業は一つの旅路に出るその人を初心の拠所として見送るということです。

素晴らしい学び合いを通して心の原風景を育てていく志事に改めて感動しました。

最後に子どもたちに希望を与える志事に魯迅の故郷の一節で締めくくります。

「希望とは、もともとあるものともいえぬし、ないものともいえない。それは地上の道のようなものである。もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ」

その希望、その初心が忘れられないように真心でお手伝いさせていただきたいと思います。