力に換える

昨日は、秋月の黒田鎧揃えに参陣してきました。これは以前も書きましたが、初代藩主の黒田長興公が島原の乱に出陣する前、正月三日に軍事演習(鎧揃え)を執り行ったことに由来し、相馬藩(現在の福島県相馬市)の「馬揃え」、土佐藩(現在の高知県高知市)の「旗揃え」と並ぶ“天下三揃え”のひとつといわれます。

主催の挨拶では、先人たちへの感謝や祈り、そして未来へ向けて想いをつないでいきたいという言葉がありました。また、秋月の藩校の稽古館の教えの唱和もありました。

長い時間をかけてどのような人づくりをしてきたか、そして藩祖がどのような想いでこの場所を見守り育ててきてくださったかとその御恩に報いているように感じました。

実際の行軍では、破邪顕正を祈り、法螺貝を立て、時の声を上げながら鎧を纏いみんなで清らかな心で行脚していきます。秋月のむかしの大切な場所へと向かい、祈り、そして本陣に戻りそのころの気持ちに寄り添うのです。

先祖が大切にしてきた気持ちは、言葉にならなくても伝統行事を執り行うことで初心に帰ります。その時の先祖や侍たちが大切に守ってきたこと、そしてそれがいつまでもその地に根付いていることなどが甦生するのです。

本陣に戻ると光月流太鼓や居合など、伝統の演奏演武もありました。

時代から先人の智慧や伝統は蔑ろになり目の前の便利さや合理性こそが智慧や革新のように思われている昨今ですがそれは本物ではありません。本物は、先人の智慧の中にあり、そして伝統の真っただ中にこそ存在するものです。

私は伝統か革新かと選ぶのではなく、本物こそ伝統であり革新であると思っています。つまり、智慧は先人からのつながりの中にこそ存在しそれをこの時代に活かすときにこそ本物になるということです。

一見、時代錯誤をしているように思われることでも時代が変われば本物を続けているだけです。この時代、次世代へと本物をつないでいくには工夫が必要です。私が取り組む「場」はその創意工夫に挑戦して本物を譲り遺すことにあります。

この体験もまた次世代への希望にし、子どもたちの力に換えていきたいと思います。