人間と向き合う

昨日、ちょうど藁ぶき古民家の甦生で塗装をしている最中に天井にアライグマが出没しました。たぬきは昔から日本にいたということは、昔話などでも知っていましたがアライグマはどうしているのだろうかと調べてみたら最近入ってきた北米からの外来種であることを知りました。

海外からの動物が日本で野生化してさらに困っているという事例は、奄美大島のハブを退治するために輸入したマングースがかえって奄美の黒兎を襲い困っているという話を思い出しました。

アライグマも人間のエゴで輸入が始まり今では害獣として駆除対象になっています。この辺の歴史のことを少し調べたものを書いてみます。

原因は、1970年代にアライグマはその当時のアニメのキャラクターにアライグマがいたことで人気になり海外から大量に輸入されたことが起因になっているといいます。幼少期は人によくなつくそうですが、もともと気性が荒いアライグマは成熟して狂暴化したりするのでペットには向いておらず飼育できない飼い主が森に逃がしたといわれます。またそのアニメの主人公が物語の中で森に放つ姿をみて真似したともいわれています。

どちらにしても飼育ができなくなった家庭がアライグマを自然に放してしまったことで、野生化した原因であるといわれます。動物園から脱走して野生化したという話もあります。そして1980年代から徐々に生息域を拡大し続けた野生のアライグマは1990年代には日本各地で発見されるようになり、2000年代に入るとアライグマによる農作物被害は非常に深刻なものになっていきました。

そのため2005年に制定された外来生物法でアライグマの無断の輸入や販売だけでなく飼育などが禁止され、今ではアライグマは害獣と区分されていますがもう繁殖の拡大に対して捕獲も追いつかず次第に増えていく一方ということになります。

以前、私も家で飼育していた鶏がアライグマに襲われたことがあります。夜に見かけると牙をむいて激しい形相でこちらに襲い掛かってくるかのような凶暴さでした。

本来、天敵であったオオカミがいれば生態系を維持してバランスを守ってくれていましたが現在はオオカミはすべて駆除されほぼ絶滅したため山の中の野生動物は繁殖をコントロールすることができず荒れ放題です。

人間の都合で生態系を乱したつけは、子孫たちの暮らしにとても甚大な影響を与えます。本人たちは安易にその時代に、その時の消費願望や欲求を満たして行動していますがそのツケを子孫たちがどう払っていくのか。すでにこのアライグマにおいては、日本全国に大量に広がって繁殖していますからもはや元通りになることはありません。

こうやって特定外来生物になっていくように、グローバル社会の中で私たちは本来はその風土になかったものを持ち込み、生態系を著しく破壊しています。そのことからかえってお金を大量に消費しながら対策を立てるというメリットもあったのでしょう。しかし現代のように、資源が失われ資金が潰えてきたらもはやデメリットでしかないのは明白です。

どうやってこれらの野生の動物とこれから共生していくか。これはコロナの状況にとても似ていると思っています。海外から持ち込まれて駆除もできない、どうやって共存するか。今、私たちは自然や野生との付き合い方、つながり方について真剣に向き合う時が来ているということでしょう。つまり人間と向き合うということです。

新しい時代、人間がどうあることがもっとも自然にとって最善なのか。人類はそこに向かって対話していくと思います。子どもたちが安心して暮らしていけるように、私たちなりの答えを生きてみたいと思います。