むかしの保育

昨日、かつて廻船問屋だった家を修繕し保育園にしている施設を見学させていただくご縁がありました。江戸末期に建てられた家が、今も息づき子どもたちを見守り育てている様子にただただ感動をしました。

昔、大きな蔵があったところは今ではたくさんの乳児たちがお昼寝中でしたが、上品な階段箪笥で二階にあがれば嫁入り道具が入っていた長持がいくつもそのままにありました。確かに家が今でも生きて、子どもたちを見守っている存在を感じ懐かしく有難い気持ちになりました。

こういう古民家を遺そうというのは今の時代では大変難しいことで、新築を建て直した方が安くできるし簡単で維持をしていくことや修繕していく方が何倍も何十倍も苦労をします。それでも大切に敢えて修繕を続ける理由を前園長先生にお聴きすると、「ご先祖様が遺してくださったものだからそれを大切にしたいだけです。」と仰っている姿に日本人の文化と精神、生き方を改めて感じることができました。

このように昔からあるものをいのち永く使われた中で保育されることが、子どもたちの未来にどのような影響があるだろうと思うとこの保育園の存在自体が大変貴重であることが分かります。「もったいない」ということを口先で教えるのではなく、まさに今の大人たちの生き方や家の体現する姿で教えずにして教えていると実感するからです。

見守る保育を提案する新宿せいが保育園の藤森平司園長が主催する臥竜塾ブログに、「家こそがルーツ」という記事があります。この記事にある通りまさに日本のルーツを持っている物語に溢れた保育園に直に出会った気がして、魂が揺さぶられ心和やかで豊かな気持ちになりました。

その保育理念も「遊べる子ども」を目指し、世界一楽しい保育園にしたいと語っておられ、見守る保育の実践に取り組んでおられました。

私たちが定義している保育は道であり、道は生き方のことです。

日々にどのような生き方をするかは、かつてからどのような生き方をしてきたかを伝承していくことでもあります。道は永遠に繋がってこの今を創造し続けるむかしから貫かれた生き方がこの今に伝道し人々がその道に感化され歩いていく人が一人またひとりと増えていくことでその大道が踏み固められていきます。日本人とはそうやって出来上がってきたのです。

古街道沿いにあるこの保育園が風土の中で子どもと道を見守り続けているのを感じ、家の持つた日本の佇まいを観ました。私はこの出会いに大いに背中を押され、偉大な勇気をたくさんいただいた気がします。

私が取り組んでいる古民家甦生もまた、日本人の道の甦生を志すものです。子どもたちのいのちの根を日本文化という地下水脈から吸い上げていけるように、「むかし」からある大切なものをいつまでも守り続けそれを譲り渡していくことに使命を感じます。

今では新しいものばかりが価値があり便利なものや流行の情報ばかりに目を向けている環境に溢れています。しかしこうかって「むかし」のものに思いを向けて観ると如何に自分たちの今がどの方向からやってきてこれからどの方向に向かっていけばいいかを省みる機会になります。

過去はまさに未来から訪れるものであり、この今はそのつながりの中で次に譲り渡していく今であるのは明白です。それを伝統の日本の家が見守っている中で行える保育はまさに私の理想のするところです。

子ども第一義の理念を通して古民家甦生の本質を学び直しつつ、子どもたちが安心して暮らしていける社會にしていけるよう社業や使命に専念していきたいと思います。