進歩と進化

江戸時代から明治に変わり一番変化したものに学ぶ場所があります。それまでは寺小屋や手習指南と呼ばれた場所が、学校というものへと名前も変化しました。それは単に建物が変わっただけではなく、目的も変わっていきました。そして今に至るまで学校の在り方はあまり変わっていません。歴史を見つめ、もう一度何のために学ぶのか、私たちは見つめる必要があるように思います。

そもそも寺小屋の時の学問の目的は「立派な人になる」ことを優先して行われました。お互いを磨き、如何に人格を高めるか、論語をはじめ仁義礼智信など人ととしてどうあるべきかを互いに学びあいました。寺小屋では異年齢でお互いに教えあい、思いやりや相互扶助の精神を尊んでいたとも言います。その当時、人口三千万に対して約五万の数の寺小屋が全国にあったともいわれます。今では、一億三千万に約二万ですから今の倍以上あったことになります。

寺小屋の特徴は習熟度を重視し、今のように一斉に年齢別に教えることを行いませんでした。師弟や仲間と家族的な雰囲気の中で学習を通して人徳を磨き合っていたようです。

明治に入り学校ができてから能力主義が入ってきて、人格よりもまずは平等に教育の機会を国民に与えて国民の能力を上げることを目的にされました。頑張れば頑張るほど評価されるという教育システムは、「自分」というものが優先され寺小屋のような思いやりや相互扶助の精神が減退していったとも言えます。今では学校では道徳という授業があるだけで仕組みはその当時の学校のシステムがより一層、競争や比較、その評価が優先され能力ばかりを磨く場所になっています。

その当時の目的は急速な近代化を目指し、欧米の教育システムをモデルに文部省をつくり学校制度をつくり教育を普及しました。とにかく能力主義を優先し、早く欧米の能力を獲得することだけに特化したのです。文明開化といってそれまでの日本の文化を否定してまで文明を優先した時代だとも言えます。その国が何を目指しているのかをみるのは今のその国の教育や学校を洞察すれば観えてくるものがあります。

今日から韓国の教育視察にいきますが、自分の国にいては観えないものも隣国で起きている課題を洞察し自国に照らせばその課題の意味もまた確認できます。近代化して今の国があるのはいいのですが、もう文明開化の時代ではありません。今の時代は文化伝承の時代であると私は感じます。もう一度、日本とは何か、日本人とは何か、世界の中でどんな役割を果たしていくのかを見つめる必要があると思います。

そういう意味でもこの寺小屋から学校へ変遷した歴史、そして学校になってからどのように今があってこれからどうなっていくのかを見つめるのが社會を育てていく教育者の本当の責任だと感じます。もう世界は持続不可能であることはそれぞれで自覚をはじめています。こういう時代だからこそ、進歩ばかりを追い求めるのではなく人類としての進化の方へと舵をきりなおす必要性も感じています。

引き続き子どもたちのためにも、歴史を鑑みながらアジアをはじめ世界の課題と向き合っていきたいと思います。

  1. コメント

    当時は何もかもが欧米に追いつくことが急務でしたから、「教育制度」においてもいろいろと課題がある上に、急がなければならなかったところに、様々な歪が出て、日本人としてのバランスを崩したのではないでしょうか。「塾」や「藩校」でもちゃんと人材は育っていましたから、単に今の「学校制度」より古い形態というのではなく、「ひとつの教育法」として学び直す必要があるかもしれません。

  2. コメント

    明治に入り、約150年でここまでもたらしたものが今明確になってきているのだと感じます。子どもたちが子ども同士で学ぶ、それは自然なことだと思うと、異年齢という環境をこのタイミングで考えるチャンスなのだと感じます。似たような課題があるのは根本的に見直すべきは一緒なのだと感じます。一つひとつの感じいる感覚を大事にしたいと思います。

  3. コメント

    共に学ぶもの、暮らすもの、ひとりひとりが師であり仲間であるという考えは、八百万の考え方であり、古来の日本だと感じます。縦糸横糸が相まって学びが深まりますが、そこから、一神教の思想が入ると縦糸の関係になり勿体無さを感じます。横糸も唯の横糸になっては織りなすものがありません。織りなすものが場であるように感じます。

  4. コメント

    園さまにお話を伺うと、忙しくて持ち帰りの仕事が多い、人が足りなくて休みがとれない、というような声をよく聴きますが、そのために本来の「何のため」が見失われているのは残念なことです。社会も同じように本質でないもののために忙しくなり、初心に立ち返る余裕が持てていないのかもしれません。まずは自ら本質を追求していきたいと思います。

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