伝統的な梅干し

先日から梅干しをつけて深めていたらなんと80年前の梅干しをある方から分けていただくことができました。この梅干しは、その方の御祖母さんが嫁いできたときに樽でつけられた梅干しです。

それまで梅干しは何年食べれるのだろうかと疑問に思っていましたが、調べてみると数百年持つものもあるということで驚きました。早速食べてみると、表面は黒い鉄のようですが酸っぱくなく古酒やワインのようで、その和かで優しい味に驚きました。

現存する最古の梅干しは奈良県の中家にある梅干しで、1576年の安土桃山時代に漬けられたものと言われています。441年前の梅干しというのはどのようなものか、ぜひ一度は食べてみたいと思いますがなんとそれより以前の室町時代の梅干しもまだ現存しているという説もあるそうです。

現代では調味梅干しといって添加物や保存料、はちみつや旨味成分などが入っていたり減塩タイプのものになっているので消費期限を約3ヶ月から半年くらいで設定されていますからその刷り込みで最初は数年くらいしか持たないものだ思い込んでいる人も多いように思います。しかしそれは添加物や保存料のせいでかつての伝統的な製法でつくれば数十年から数百年持つということが梅干し本来の凄さです。

防腐効果がある伝統の食品に保存料を使うという愚をなぜするのかと疑問に思いますが売れればいいと舌先三寸の味に走ることでそれまでの梅本来の智慧や徳が観えなくなるのはとても残念なことです。

伝統的な製法で昔の塩をつかい、手作りで塩分濃度を20%に保てば何百年も持つという真実を聴いて、改めて梅干しの防腐効果の偉大さに尊敬の念がこみあげてきます。梅干しはかつては日本人には欠かせない薬だと思っていましたが、この80年ものを食べてみてはじめて私も梅干しのことを本当に信じられた気がします。

高温多湿の腐りやすい日本の風土において遥か昔から病気の予防や、薬として先祖たち、多くの人が愛用し続けてきたこの梅干しは至高の智慧の結晶であり、自然防腐の仕組みを内在した健康食品であったということです。

どんなものを今まで食べてきたかということの中に、梅干しがその真ん中にあったことを感じます。梅はずっと私たちを見守り助けてくださってきた木であり、その存在と同じくらいその徳を尊重して大切にしていこうとした先祖の信仰心には頭が下がる思いがします。

今回の梅干しのご縁で改めて発酵の魅力を再発見するとともに、伝統的な梅干しを天神祭に向けてさらに深めてみたいと思います。

 

  1. コメント

    自分の歳をはるかに上回る梅干しが現存する事に驚きですが、天神祭のお陰で80年物の梅干しを口にすることができたと思うと感謝の念が湧いてきます。酸っぱいものが苦手なだけにこれまで避けてきましたが、他のことにも通じることだと思いますが、避けるということはそれだけ奥深さを感じる機会から遠のくことでもあるのだと感じました。酸っぱさよりも実感したこの感覚を大事にしていきたいと思います。

  2. コメント

    つい最近まで、「梅干しづくり」はわが家の年中行事でした。子どもの頃の梅干しづくりは、ほんとうに手間暇をかけて丁寧に丁寧につくっていました。80年ものの梅干しは、その味を思い出させてくれました。お腹の調子の悪いときやお弁当にと、随分お世話になりましたし、未だにその智慧は生きています。冷蔵庫のような設備や防腐剤といった薬品もない時代から、どれだけの日本人を支えてきたことでしょう。こういう智慧が消えていく価値観を残念に思います。

  3. コメント

    80年の歳月はお金では買うことはできませんが、皆で味わうことができたということは、これもまた天神様のお導きかもしれませんし、またそのメッセージを受け取れる当主の心の状態に感謝の気持ちでいっぱいです。時を味わう体験があるからこそ、自分たちもその時間軸でモノを現実味を帯びて考えることができるように感じます。

  4. コメント

    味噌も毎年作るようになり段々とその感覚が掴めてきていますが、一年でそのようなものが80年もの月日が経ったものとなると積み重なった月日の大きさに圧倒されます。それが今でも食べることが出来るというのは不思議にも思えますが、日本の風土にあわせて生み出された食の結晶として、梅干しを見直していきたいと思います。

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