土の芸術

いよいよ今月、聴福庵の離れの建築にて念願の瓦葺きを体験するご縁をいただくことになりました。離れの伝統的な日本家屋を自らの手で職人さんたちと一緒にクルーたちと共に取り組めることは本当に仕合せなことです。

床下には今まで自然農や自然養鶏、妙見高菜や埋炭技術で培ってきた発酵場を創造します。そして屋根には、呼吸大学の宮本代表や田口理事長、伝統瓦葺き職人の野殿様の御力をお借りして古来からの伝統技術でもある湿式工法にて葺いていきます。

今回はさらにご先祖様の智慧を結集させ、建て方一つ一つに古来の工法にこだわり、また柿渋や渋墨、ベンガラの塗料、さらに水は井戸水を用い、炭で沸かす風呂も設置されます。板戸や格子戸、無双窓も用いられ、横からの風通しにも配慮しました。

地球には天地があります。天から雨が下に降り、その雨が地中から天に帰っていく、この当たり前の循環を邪魔しないこの聴福庵の新しい建物はまさに日本の暮らしの基礎、日本的精神の理念を体現するものです。

この日本の風土の中で、如何に何百年も持つ建物を建てるか。それは御先祖様が長年様々なことを実験し、さらには日本文化に昇華して子孫へと譲り渡してきたものです。その智慧は、何よりもこの風土で積み上げられたものであり、この風土にまさに適ったものであり、唯一無二のものです。

この風土と一体になったものを文化というのです。

そして日本文化を学ぶのに、この日本古来からの家づくりというものは大変貴重な経験になります。

日本では土を焼いて固めた土器類を「カワラケ」と言っていたそうで「日本書紀」の中で甲冑の事を「カワラ(伽和羅)」と言い亀の甲羅のように固く上を包むものという意味です。日本では屋根瓦は「カワラ」と言い、「カワラケ」は土器類の総称として残ったのではないかと言われます。

この土の文化というものは、かつては縄文時代から私たちは様々な土器を土を用いて創造してきました。瓦と土による湿式工法での瓦葺きはまさに、土の芸術とも言えます。

最近は、左官職人とのご縁も増えましたがその原料である土が今回は屋根の上に用いられ家を守ってくれます。土は地球そのものですから、その土をどのようにご先祖様は暮らしに活かそうとしたか、その技術だけではなくその精神も学び直したいと思います。

子どもたちに確かなものを、また本物を譲り渡していけるように、引き続き覚悟を決めてリスクを選び、真摯に本質を掴み取って伝承していきたいと思います。

 

 

  1. コメント

    先般、熊本城天守閣の瓦の仕掛けを知って、日本人の思想と智慧の深さを学びました。一年の気候や湿度だけでなく、地震や台風など自然災害が多いのも、日本の風土の特徴です。幾多の試練の中工夫に工夫を重ねて生き抜いてこられた先人たちの智慧の本質とその深さを、今回は、「土の生かし方」を通してしっかり学ばせていただきたいと思います。

  2. コメント

    縄文土器に施された文様も土に始まり、瓦を含め身近にある土を様々な形で使ってきた暮らしから、現代はずいぶんかけ離れてしまっていることを思います。そして、床下の発酵場も今こうして繋がり、不思議ですがあの頃から今に向かって動き始めていたのだと感じます。何に繋がっているか分からないほど、学びに溢れているからこそ、一つでも多く吸収できるようしていきたいと思います。

  3. コメント

    今までの実践があってはじめてこの離れの建物があることを改めて感じます。「日本的精神の理念を体現するもの」の言葉には畏れにも近い感覚を受け取りました。左官職人が聴福庵のことを「『土を塗る』などの部分ではなく丸ごと体験できる場所」のように仰っていたと聴きましたが、この離れの瓦葺きも自分たちが思っている以上の貴重な体験なのだと思います。一期一会の気持ちで臨んでいきたいと思います。

  4. コメント

    土を扱う智慧を学ぶことは、暮らしの中でもまた大きな意味があるのだろうと感じます。今回の体験までの学び、体験からの学び、それぞれを通して意味を深めて行きたいと思います。

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