おくどさん

昨日は、おくどさんの竈を左官と仲間と一緒に手作りでつくりました。約500キロ以上の土を運んで、鏝で叩いて固めながら成形していくのは子どもの粘土遊びのようで夢中になってやりました。

この土は、自然農で7年間共にした田んぼの土を用いそこに淡路の土や石灰、井戸掘りで出てきた粘土などを混ぜて作り上げていきます。すべての土もまた身近にあるもので、ご縁があったものを活かして甦生させていきます。

この竈は、竈の神様である三宝荒神、その横には愛宕神、火伏の神様たちをお祀りしている真下にあります。暮らしの中心にある火は、竈の神様と共に私たちの人生を支えてくれる存在です。これらの存在を自分たちの手で甦生させていくことはいのちの火を甦生することで、先祖代々から今までずっと一緒に生きて助けてくださった日本の暮らしの道具と共に再び歩もうとする決意でもあります。

私たちは便利さと引き換えに今まで大切にしてきたものや、自分を助けてくれてきた道具を不要だと捨てていきます。日本にはもともと「勿体無い」という精神があり、お役にたってくださったものへの御恩を忘れずにそれを大切にしてきました。さらには役に立たなくなったのは自分の見立ての問題だとし、見立て違いを反省してさらに他のお役に立てるように配慮をして大切に尊んできました。

今では新しいものが価値があるとし、古いものは価値がないとさえ思われ捨て去られていきます。しかしこの捨て去られるものは、今まで役に立ってきたものであることは明白です。自分の都合で損得利害を測り、要不要を捌いては捨ててしまうという考え方はこの地球上でみんなで助け合っていきる共生の概念とはかけ離れたものです。

古の道具は、暮らしを一緒に生き延びてきた智慧と共にあります。田んぼがあれば、そこには稲藁があり、土があり、そしてお米があります。牛があり鶏があり、馬があります。さらには、トンボや蛙、蜘蛛や土壌の菌類にいたるまで長い年月を共に暮らしてきた仲間たちがあります。

今では動物たちは食用にされ、虫たちは害虫になり、菌などは農薬で殺菌されていきます。一緒に暮らしてきた仲間たちを、自分たちの便利さや身勝手のために簡単に捨て去っていくということに悲しみを感じます。

私が暮らしを甦生する理由の一つは、かつての仲間たちを集めていきたいからです。自分たちの都合で捨てて本当に申し訳なかったと、そのすべてを拾って新しい価値を創造しようとしているのです。

その価値は、人類の未来を変え、世界の行く末を変えていきます。

引き続き、子どもたちが末永く仕合せに豊かな心で暮らしていけるように今できる最善を盡していきたいと思います。竈の神様が見守ってくださっている安心感に包まれながら暮らしの実践を高めていきたいと思います。

  1. コメント

    「ものの価値」は、それを認めれば生じ、認めなければ消えてしまいます。「要不要」は、時にあっても構いませんが、不要だからといって「排除する」という考え方は、「勝手主義」です。「生かす」という発想は、「要不要の判断」から出てくるのではなく、「存在を認め感謝するところ」から生じます。「生かすものとそうでないもの」ではなく、「すべてを生かす」という発想を固めておきたいと思います。

  2. コメント

    福岡農園の土を使い竃を作る、感慨深いものを感じています。当初とても土が硬く、鍬がなかなか入らなかったあの土を活かして今回に繋がり500キロ以上の重みを感じます。土が人を潤していることを大事に暮らしを大事にしていきたいと思います。

  3. コメント

    ブログを読んでいくと、自分自身の中に生まれる、人や物への不平不満や不足の感情というのは、自分の見立ての問題なのか!とハッとしました。結局のところ、自分が傲慢になり、人やモノをそのものをそのままにみることが出来ず、「自分の思うようには役に立たない」と見立て違っては「役立たず」と新たなものを求めたりしているだけなのかと感じました。先日も「新たな価値を見つける」ということについてブレストを行いましたが、今ないものを作り出すことばかりに目が行き、今あるものの価値を正しく見立てることの難しさとその重要性を学んだこともあり、改めて共通する概念を今日のブログでも感じさせていただきました。「今」に軸足を置くのは難しいなぁと改めて感じますが、しかし、それこそが道だと今は感じているからこそ、一歩ずつ歩んでいきたいと思います。

  4. コメント

    あの竈の土に井戸掘りで出てきた粘土を混ぜていたというのも、掘りを自分で体験してきたからこそ感慨深いものがあります。あるものを活かしたり見立てたり、子どもの頃はそうやって何でも身近なものを使いまた別のものを生み出していたように思います。何か聴福庵での暮らしの再生の中には、遊びの発展形のようなものが沢山感じられるのが興味深く、そこにまた本質があるようにも最近感じています。

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