生きた歴史

昨日、地元の神社の大宮司様から郷里の歴史についてお聴きするご縁をいただきました。紙面上で記されている歴史とは異なり、生の声で体験から語られる歴史は重いものがあり、そして生きるための智慧に溢れていました。

大宮司様は鎌倉時代より代々この土地を見守る宮司家を継承し、不動のままに現代まで継続されておられました。激動の時代の影響を受けながらどのように郷里が変化し興亡を繰り返して発展してきたか、その歴史には本当に頭が下がる思いがしました。

お話の中身は現代までの90年間についての地域の変遷でしたがなぜ今がこうなっているのかをすべて心から納得できるものでした。お陰様でこの話の先にこれからどのような変化が起きるのかを客観的に判断していくことができます。

歴史の素晴らしさは、その歴史の経過から今までを知ることで感じます。人は今までの歴史を知ることで今に誇りが持てます。今が誇りが持てるのは、それだけ積み重ねた上に今の自分が立たせていただいていることを自覚するからです。

お話の中では戦前から戦中、戦後のお話は心が苦しくつらいものがあり、今では想像もつかないような戦禍を経て今の自分があることにも感謝の念がこみ上げてきます。今回は郷里の歴史をお聴きしましたが、実際には日本の歴史そのものを語っているかのようでした。地域の起きている課題は日本全土の課題そのものであり、地域の課題が解決するのなら日本全土の課題もまた解決するように感じました。

今までは当たり前だった風土と一体になった暮らしがなぜ地域から消え失せたのか、人々が大切に守ってきた伝統、信仰や御祭りがなぜ廃れてきたのか、そこには今まで必要とされてきたことが突如として欧米が入り解体させられ不必要になっていったという事実。大宮司様の経験からどのような方法でどのような経過によって今になったのかをつぶさに確認することができました。

まさかこの歳になり、はじめて私はちゃんと郷里の歴史と向き合ったように思います。思えばあれだけ子どものころから学校で教わった歴史は何だったのか・・・論語の「女(なんじ)にこれを知ることを誨(おし)えんか。これを知るをこれを知ると為し、知らざるを知らざると為せ。是(これ)知るなり。」で私は何も知りませんでした。

郷里への恩返しの実践によってはじめて私はこの郷里の本物の歴史を学び直しています。歴史を生きたままにするのは歴史を語る人、その歴史を継ぐ人がいるからです。歴史を自覚するには、その根底に感謝や恩返しの実践が伴わなければ単なる知識になってしまうのです。

最後に私たちは生まれて育てていただいた土地、自分の身体を形成してくださった土地、空気や水やその他の環境全てはその風土が醸成してくださった風土の産物です。その風土の産物として風土に還元していこうとするのは、自然と共に暮らし循環を已まない有史以来の私たちの生き方です。

子どもたちのためにも、生きている歴史を常に学び直しながら、自分が生きたままの歴史そのものである自覚とその誇りを心に持ちながら暮らしの復古創新、本物の民家甦生を手掛けていきたいと思います。

  1. コメント

    築120の古民家、それだけでも歴史を映す誇り高いものではありますが、あの地あの場所に建つのは必然だったのかもしれないとお話を聴き感じました。そして、心の拠り所を得たような安心感に包まれるような感覚があります。歴史を言葉にしてしまったら薄れてしまうのかもしれませんが、生きた歴史をつないでいくこともまた頂いたお役目なのかもしれないと感じます。ただ、家を直しているわけではない、もっともっと深く大きな意味があることを心に留め、今この時に新たな歴史を書き加えていきたいと思います。

  2. コメント

    「結果の歴史」ではなく「変遷の歴史」こそ学ばなければなりません。その「変遷」を知っている人、それも「偏った部分」ではなく、その「全体の成り行き」を知っている人からきちんと学ぶ必要があるでしょう。敗戦等による苦渋の決断は受け入れつつも、そろそろ再建のための「新しい歴史」を刻み始めたいものです。

  3. コメント

    歴史は教わるものと思う節があります。その土地の歴史を知り、語ってくださる人々に聴きに伺い、歴史に触れに行くというのはあまり行動した記憶がありません。しかし、昔は皆さん、授業で習うというよりも触れに行ったのではないかと感じます。足を運んで触れた歴史になにか重みのようなものを感じます。私自身も会社の歴史を語って行きたいと思います。

  4. コメント

    先日の一円対話の自由テーマ「苦しかった時、この見守りがあったから…」というエピソードでも、その人それぞれの歴史というか、今に繋がっているものを感じ、そういう多くのものに自分は陰ながら支えられているのだということを実感しました。今日の取材もそうでしたが、知るではない姿勢で、様々な生きた歴史を聴いていきたいと思います。

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