古井戸の甦生

昨日より、いよいよ古民家の古井戸の甦生をはじめました。もうずいぶん長く使用されていなかった井戸を、手掘りで再生をはじめたのですが慣れない仕事で体中が筋肉痛です。

井戸掘りのプロの方に見ていただき色々と調べてみると、大体6メートル近くはあるらしく今は1メートル半くらいは掘ったのでこれから残りの分を少しずつ掘っていく予定です。

手掘りで井戸掘りのことを伝えると、近所の方や知り合いが懐かしいと見に来てくださいました。昔はみんな井戸水を使っていたこと、日々の暮らしの根元には井戸があったこと、近所の酒蔵や醤油さんはその水でお酒や醤油をつくっていたことなどをお話していただきました。

夏はとても冷たく、冬は温かい、大体年中平均が16度前後の美味しい水が出るといわれ水が出てくる日が楽しみになりました。

昔の日本人は、自然の中に精霊のようないのちがあることを見出し、八百万の神々といってすべてのものに畏敬の念を持ち祈りを奉げお祀りしてきました。家の中には、厨房のおくどさんには三宝荒神さまがいて、トイレには烏枢沙摩明王さまがいて、井戸には水神さまがおられるとして大切に清浄にされてきました。

今では見えないものは信じられず、見えないものを語るとオカルトや宗教や頭がおかしいなどと中傷されますが古来の先祖は見えないものが観えたかのようにそこにあるものとして様々な祈りを奉げてきたのがわかります。

私たちの暮らしを支え見守る火や水、風、土、木や石、月や炭などもそこに確かに精霊やいのちが宿っていていつもその御力をお貸ししていただき私たちが生活していけることができているという感謝の念を忘れることはありませんでした。

今では簡単に火も水も風も、そういうものを自由自在に使えるように科学が発展しましたが技術だけで生み出したいのちの入っていないものに精霊やいのち感じることはできなくなってきたのかもしれません。

炭で熾す火とガスで簡単に出てくる火、井戸の中にある水と、蛇口をひねるとすぐにでてくる水に精霊やいのちをどちらがあると感じられるかは触れてみれば一目瞭然です。

人類が自然を破壊し大きな岐路に立たされているときだからこそ、どのように生きるか、いままでどのような心構えで生き永らえてきたのか、先祖の智慧を頼る必要があると私は思います。

最後に、外の猛暑とは一変してひんやり別空間の掘り進める井戸の中から真上を見上げると、青空が見えそれをのぞき込む仲間たちの笑顔が観えました。その光景にかつての井戸端会議なども井戸の中に響いたのではないかとも思い、生活や暮らしを土の中からお母さんのように見守る存在として水の神様があったのではないかとも空想しました。これはまさに土と水の調和の上に家が立つという教えだったのかもしれません。

有難い井戸や水神さまの存在に感謝しながら心を籠めて丁寧に掘り進めていきたいと思います。

 

 

  1. コメント

    生涯のうちに井戸を掘るとは思ってもみませんでした。暑さの中での作業は大変ですが、中に入るとひんやりした感覚や意外と居心地のいい感覚もありました。神社掃除もですがこの井戸掘りにも相通じるものを感じています。決して本当に水まで掘り当てることでも、塵一つ残さないことだけを目的にしているのではない、そこに力を感じます。掘りはじめる至った一言も大きな転換点です。自分にできることを一つ一つ行っていきたいと思います。

  2. コメント

    「井戸」そのものは、かなり早くに姿を消しましたが、「井戸水」は、子どもの頃まで使われていました。一定の温度であるため、夏は冷たく冬は温かいものでした。それが、水道水になって、夏に生ぬるい水が出てくるようになり、また、美味しさもなくなって浄水器をつけるようなり、子どもの頃とは全く別ものになってしまいました。改めて、井戸水で暮らしていた頃の豊かさを思います。

  3. コメント

    感謝の気持ちを持って井戸を掘り進めていくというのは本当に大切な事で、何のためなのかを省みる機会になりました。そんな中で出逢った、井戸の中の大量に廃棄されたであろう食器の数々。そこからは無造作にシャベルを振り下ろすのが忍びなくなり、自然と手で割れた破片を拾うようになっていました。一方では聴福庵にて古い食器が大切に扱われ、もう一方では心ない人に無残にも廃棄され土の中に埋められていた現実。ものごとの両面を観ながら、大事なことを掴んでいきたいと思います。

  4. コメント

    水神様からの呼び声を伝えにきてくださったお客様との聴福庵での体験から導かれ、梅に出会い、祈祷を体験し、井戸掘りを始める。いろんな導きを感じます。私の元にも小さな梅の木を手にし、昨日剪定をしました。ひとつひとつの導きにどんな意味があるのか。導かれるだけでなく、深める真摯さを忘れずにいたいと思います。

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