本当の変化

時代が変わってしまうと懐かしいものが新しいものになります。その理由は、時代の変化と共に価値観が変わり本来であったものが発展していく過程で複雑になっていくからです。ある程度まで複雑になってしまったものは、成熟してしまい変化ができなくなっていきます。つまり現代の価値観の中における変化というのは、複雑化していくということです。

その複雑化したものを原点回帰してまたはじめて新しいものにしていく。こうやって時代は何回も同じことを繰り返しているようでシンプルになることと複雑になることを往来しているともいえます。

例えば、料理でいえば最初はとてもシンプルだったものが様々な時代の流れや新たな料理が開発されていくなかで品数も増え味つけや方法も増えていきます。しかしある程度までいくと元に戻らなければそこから増やしていくことができなくなります。つまり変化がなくなっていくのです。老舗の味などは、このやり方とは異なり同じ味を時代が変わっても追及するなかで微細な変化を続けています。これは先ほどの足し算ではなく引き算によって変化を長く続けようとする仕組みです。

短期的な変化は、複雑化していくことですが長期的な変化は原点回帰を続けることです。これを不易と流行ともいいます。何を変えて何を変えないか、このあり方に生き方や生きざま、取り組み方や姿勢がすべて入ってきます。

和魂洋才や和魂漢才などの和魂という言葉があります。これも本来の日本人として生き方は変えないままにその時々の海外の文化を吸収して活用するということです。元を変えないということで原点回帰を続けていく仕組みです。しかし変化が長期的でゆっくりです。明治時代以降、日本は短期的でスピーディーな変化を採用してきました。つまり先ほどの言葉では、洋魂和才、漢魂和才ともいうのでしょう。変化はでて複雑化して発展しましたが成熟して変化が失われてきました。変化しないものは、滅びるのがこの世の常ですが変化は生きていることにおいて何よりも重要なテーマです。

今の時代、複雑化を変化と呼ぶ人があまりにも多くなっていますから新しいことばかりを求めては懐かしいものには目もくれません。しかし先ほどの老舗や長期的な取り組みを生きるかつての和魂のある日本人は懐かしいものを変化と呼びました。

私の取り組む懐かしい未来や懐かしくて新しいものは、本当の変化への挑戦になります。ここ数年、これに気付ける人たちが集まってきては、変化の核を形成してきました。遅々たる速度ですが、それが日本的な引き算の美徳と変化の本懐です。

引き続き、日本の未来をよくよく見据え今に積み重ねていきたいと思います。

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