人間は愛情深い生き物です。様々なものに執着しては情を交わします。その一つには家畜やペットがあります。むかしは、家畜は馬や牛など家族の一員として大切にしていました。一緒に食べるものを増やし協働で暮らしてきました。
現代は、家畜は減りその代わりにペットが増えています。ペットは愛玩を目的に飼育されるものです。ペットの語源は、pettingから来ていて撫でる、愛情で慈しむなどから来ている言葉です。その起源は、5000年前のエジプトのピューマからだとも言われます。太古のむかしから、人間と動物、あるいはあらゆる生物に間には情を交わしあうことがあったように思います。
動物が懐くという言葉があります。この懐くは、懐かしいからきている言葉です。この懐かしいというのは、何が懐かしいのか。それはお互いに安心しあえる心の故郷に出会ったという感覚が近いように思います。もっと深く言えば、一緒に暮らしてきた記憶に出会うということです。
私たちの肉体というのはこの世の摂理で必ず滅びます。つまり死を迎えるのです。しかし、死を迎えたとしても一緒に生きている仲間たちが記憶を受け継ぐその後も記憶を継承して生き続けていきます。つまり死んでも記憶として一体になっていくのです。
よく懐いているというのは、同じ記憶を共有しているということでもあります。懐かしい記憶としていつまでも忘れていないのです。懐かしい未来という言葉もあります。これはよくラダックなどで伝統的な暮らしをしている人たちの場所を指したりします。
むかしから変わらず、動物たちと助け合い厳しい自然のなかで小さな恩恵を分け合いながら豊かに幸福に暮らしているのです。人々が心を許しあってあらゆるいきものたちと安心して暮らしてきた記憶。
生き物たちが懐くのは、その懐かしい心をもち、かつての美しい暮らしをしている人間に出会うからかもしれません。
現代は、動物は悲惨な目にあうことが多い時代です。懐かしさのかけらもないほどに、金銭的になるものを産み出し続ける異常な社会になっています。お金にならないのならお金にしていく、その中にかつての懐かしい暮らしや懐かしい生き物たちの居場所も失われてきています。
人間は人間のみの世界ではなく、あらゆる生き物との共生の道を模索していく必要を感じます。暮らしフルネスを通して、学び直していきたいと思います。