視野を変えるということ

吉田松陰の松下村塾に飛耳長目録というものがあります。これは自分が見聞きしたもの、また塾生たちが見聞きしたものを記録に残しそれをみんなで読み合わせをして情報共有をはかったものです。

この記録はそもそも自分という存在が世界を変える存在であるということを認識する広い視野を育て、自分自身が見聞きして発信したことが多くの人達に気づき影響を与えることを自覚することにも役に立ったのではないかと思います。

あの当時、インターネットやテレビ媒体がないなか、一田舎の農村で育った青年がまさか自分が世界を変えようとは思えなかったはずです。しかしそこに松陰が顕われ、何のための学問なのかを背中で示し実践で感化したからこそそこで育った若者たちがその後の世の中を変革する原動力になったように思います。

そしてここで大切なのは「視野」のことなのです。

自分の視野というのは、自分だけのことしかみえないときは世界は自分と切り離されています。自分が実践を怠ったってそんなに意味がないと思えるでしょうし、別にちょっと手を抜いても問題ないと思えるのでしょう。

しかしもしも自分の実践が一つ怠ることで世界が変わるとしたら、周りが変わってしまうとしたらどうでしょうか。その自分の存在の怖ろしさに心身が震え上がるはずです。本来、世界の広さというのは別に地図で理解するものではなく、遠く広大なところなどと認識するものではありません。

そもそも誰かに刷り込まれ教化された世界などというものをいつまでも世界だと信じ込んでいるから世界観は育たないのです。世界とは、自分の視野です。自分の視野が世界なのだから自分の視野を変えてしまわなければ世界もまた変わることはないのです。

人は信じ込まされた世界がどちらが理想かで信じる世界を顕現させます。自分が先に諦めてしまったり、自分が先に絶望してしまっていては世界は今のままかもしくは今よりも悪くなる一方です。

そんな中、常に世界を自分の求めた理想に近づけよう、世界平和と人類和合を願う真心があるのならその世界にしていきたいと「自分を変える」、自分の視野を入れ替えるくらいの信心と努力、精進が必要なのです。

人ばかりを変えてもらおうとするのは自分の都合というちっぽけな視野に囚われているのです。そうではなく、自分を変えて世界を変えようと自分の視える世界を変革するものこそ君子であろうと私は思います。

実践は怠ってはならないのは、この刷り込まれ教化された世界に埋没するからです。何がなんでも埋没しない、何がなんでもマンネリ化しないと戒を持つことでまた自分を練り修行していくのでしょう。

学びは果てしなく続きますが、同志たちとの邂逅もあります。

仕合せは視野によって開かれますから引き続き歩みを強くしていきたいと思います。

  1. コメント

    司馬遼太郎さんは、ある講演で「歴史というものはない。誰々が語る歴史しかない」とおっしゃってました。確かに、『竜馬がゆく』がなければ、日本人の龍馬像は変わっていたかもしれません。時代認識においても同じでしょう。そうなると、誰に学ぶか、何を学ぶか、そしてどんな世界を信じるかということにかかってきます。世の中には、時代を越えて過去を認識できる人がおり、未来を見通せる人がいます。誰を師とし、何を学び、そこから自分の生き方をいかに創り上げるか、その選択眼が問われます。松陰先生に入門を許されるような自分であるか?!そこを問わねばなりません。

  2. コメント

    この時代検索一つでどんな情報も一瞬で探し出し読んで分かった気になりますが、果たしてそうなのかという事がつきまといます。引き続き荻生徂徠を調べていると情報が蓄積されていきますが、考える前で辿りついていることがある事も同時に感じています。ただこの「そうか!」をどうしたら今に活かしていけるか、ここからが視野を変える事なのかもしれません。荻生徂徠の境遇が生み出した原典に当たる術は、今も十分通じる事で今だからこそ尚更必要な事だと感じています。今回それぞれの実践を記録化したら、現代の飛耳長目録になるかもしれません。【○】

  3. コメント

    これはこのための実践、という具合に意識して行っていることは、怠った時に疚しさが生まれるため自分でも分かりやすいですが、意識していないレベルでの日々の習慣や癖からの行いこそ注意しなければならないように感じています。それがどれだけ自分や周囲に影響を及ぼしているかを考えれば、根は深くても着実に変化させていきたいと思います。

  4. コメント

    生臥竜塾のHPを日々見ていると、その「視野」の大きさと、皆がその目的のために実践と発信、共有をしている姿が体感できると同時に、自分自身の心のブレを押し戻してくれる勇気を頂いています。クルーブログと同じように感じますが、改めて自分自身が、いったい何の視点で実際に書いているのか、その観点からぶれないように、歩んでいきたいと思います。

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