品を磨く

懐かしい道具には懐かしい品があります。この品は、そのものがどのように出来上がってきたものか、またどのように使われてきたか、そして長い年月を経てどのように変化してきたかというものが顕れてきます。

大量生産大量消費するものには品があまり感じられないのは、質が異なるからです。よく品質の良し悪しを観て品質を見定めるというものがありますが、質とは品であり、品が質のことですが品質とはつまりそのものが持っている本物の姿であるということです。

品という字は、そもそも品格や上品、気品といって最上のものを語られる言葉で使われます。つまりは品とは、そのものの価値であり、そのものの本質、そのものが顕現していることを品といいます。

これを人で例えば、その人がどのような心や精神の人物か、またどのような生き方をしてきたか、どのような信条を持っているか、どのような存在価値を持っているか、そこに品が顕現します。

古い道具は品があるのは、それは作り手や使い手が長い年月正直に磨き上げ、そして育て、さらには真心が伝承されてきているからに他なりません。人の心が入らず、工場で不自然に簡単便利に加工されたものはどうしても品が失われるのは道具本来の本質の価値が磨かれていないからです。

品を磨くというのは、ただ道具を磨けばいいのではなくその道具によって磨かれるということです。切磋琢磨とも言いますが、自分自身のガサツな性格を磨き直し、心を丁寧に入れて丹誠を籠めるような生き方を変えていけば品もまた備わっていきます。

品質や品格といったものは、大切に育てたいのちの醸し出す薫りのようなものですがその薫りが周囲を穏やかにし懐かしい気持ちにさせてくれます。

生き方の学び直しは本物の道具に触れることからです。

引き続き、本物にこだわり品質を高め恥ずかしくない品格を道具から学び直していきたいと思います。