英彦山での暮らし

英彦山では冬の厳しい寒さを超えて、井戸水を復旧しました。2月は室内も零下になっているためあらゆる水場の蛇口が凍ってしまいます。特に今は水洗便所になったこともあり、トイレタンクが破損したりします。トイレの周囲には暖房を入れて凍らないように温めておきます。北海道やアラスカなど、日頃から極寒の地域ならわかりますが福岡県でここまで寒いところはなかなかないように思います。

氷点下8度くらいまでは下がることもあり、家も全体が凍ったようになります。むかしの人はどう過ごしていたのかと思いを馳せると色々と想像できないものがあります。

特に雪の山は食料も少なかったと思いますから、秋のころに備蓄したもので冬を乗り切ったはずです。また雪が多かったから移動も大変です。今では公道ができ車が入ってこれますがむかしの英彦山にはそれもなかったことが旧道を通るとわかります。グネグネとしたカーヴを曲がりながら下山するのも歩けば一時間以上はかかります。

この宿坊の前の坊主は、小さい頃は歩いて町の学校まで通っていたと仰っていました。片道、2時間から3時間ほど。帰宅する頃には真っ暗になっていて怖い思いをしたとお聴きしていました。

人はなければないものが当たり前になりますが、いざあるとなってみるとあるものが当たり前になります。宿坊も進化して、電気が通り今ではだいぶ快適な暮らしをしていくことができるようになりました。それでもまだまだ不便なところがたくさんあります。

山の暮らしの楽しみの一つは不便さです。敢えて便利を知っていながら不便を楽しむという喜びがあります。あるものを色々な形で活かすのです。そうすると前よりもその行為や遊びが楽しく感じられます。

よく考えてみるとどの時代もそうやってあるものを活かし、ないものを遊びながら暮らしを調えてきました。人は、心の持ち方次第にどうにでも日常を変化させていくことができるからです。

英彦山での暮らしも2年目に入りこれからますます暮らしフルネスの実践が増えていきます。子孫たちに英彦山というお山の魅力やそこで暮らしてきた山伏の生き方を伝承していきたいと思います。