しだれ桜の妙味

今週は英彦山守静坊の桜がいよいよ開花をはじめます。この数日、雨が降っていますが春霞の風景と老樹が幻想的な雰囲気をつくってくれています。歳月の美しさは、花の中にも顕れます。

花といえば、この雨と花の季節のことを催花雨(さいかう)といいます。これは開花を促す雨のことをいいます。この時期はしとしとと長い時間をかけて雨が降ります。この長雨が植物たちにそろそろ春が来てますよと促して桜もそれに応じて花を咲かせるのです。

他にも春雨や春時雨、春霖という呼び方もあります。そして菜種梅雨ともいいます。これは菜の花(菜種)が咲く時期にまるで梅雨のようなどんよりした天気が続く現象のことです。これは移動性高気圧が北に偏る「北高型」の気圧配置になり普段は北東進する低気圧が東に進みそこに停滞前線が発生するからだといいます。

他にも花の雨や花曇り、花冷えなど花がつく言葉もたくさんあります。これはこの時期のどんよりした寒くなっている風景の中に花が咲いている様子を連想できます。桜や菜の花などが雨にしっとりと濡れて、晴れ間の太陽の間にキラキラと瑞々しい輝きを見せてくれるときに感じる言葉です。

日本語は、美しい季節の模様が入っているものです。

普段当たり前に使っている言葉でも、その中には自然の美しさや変化が宿っているものがたくさんあります。守静坊のしだれ桜の開花を見守る中で、春の美しさ、変化の尊さを味わうことが増えました。

特に英彦山は、山の変化も日々に味わえ自然の放つ美しさに見惚れてしまいます。鶯や山鳥たちが澄み切った甲高い声で春を伝えてきます。

春の桜と長雨は、その雫一粒にも心に花が沁みこみます。

静かに守る風景を春と共に味わい、宿坊は初夏への準備を調えていきます。