徳の伝承

守静坊の甦生に関わってから、音楽や演奏者にご縁があることが増えました。ひょっとしたらこの場所が、英彦山の弁財天をお祀りしている場所と深い関係があるのかもしれません。不思議ですが、この場所は芸能に関する人たちにとってとても居心地がよい場所であることはすぐに実感します。

音にも相性があるように、場にも相性というものがあります。相性の善いもの同士が和合するとき、独特な居心地のよさがあるものです。

この相性というものを深めてみると、そこにはお互いに相応しい存在であることがわかります。この相応しいという言葉は、別の言い方がたくさんあります。例えば、適材適所とか、似合っているとか、和気あいあいとか、しっくりくるとか、他にも膨大な組み合わせの言葉があります。

それくらい相応しい関係というのは、和合している関係ということで奇蹟でもあり幸運でもあります。

場というものには、その場に相応しいものが集まってくるものです。その集まってくるものを上手に活かすところに徳を積むことがあるように私は思います。

徳というのは、別の言い方で徳性という言い方もあります。もろもろの力が発揮され活かされるのにはその中心に徳性を持っているということです。中心が徳であれば、周囲のものは和合していきます。つまり相応しいものたちが集まってくるのです。

例えば、自然を観てもよくわかります。

畑や森をよく観察すると、土を中心に場が醸成していてそこにいる作物や樹木、草にいたるまで適材適所に共生して調和します。それは土がいいからです。この時の土こそ徳の中心であり、周囲はその徳に活かされたということなるのです。

つまり場というのは、中心は土です。この文字も、土を盛って太陽を祀る字です。土と太陽の間に一つの徳性が養われる仕組みがあり、私たちはそれを場と呼ぶのです。

守静坊は特に美しい太陽を眺められる場所にあります。夕陽は格別でいつも夕陽を眺めては仕合せな気持ちに包まれます。場と太陽の組み合わせは、私たちに徳を感じさせるものです。

守静坊のサクラ祭りでは、夕陽を眺めながら篠笛を吹き懐かしい日本の心を甦生させていきたいと思います。場があることに感謝して、徳を伝承していきたいと思います。