人道の精進

世の中には天道と人道というものがあります。天の道は自然の道ですから、人間が中心ではなくあらゆるものを役立てて活かしていきます。人間にとっては都合が悪いことも自然は関係なく自浄していきます。たとえば物が壊れていくのも、虫が増えすぎるのも雑草が鬱蒼としていくのも、万物を創造し万物を破壊するのも天は選ばず、天は自然そのものだからです。

しかし人間はそうではなく、自分たちの中に善悪があり、自分の都合で役に立つか立たないかを選別してきましたからすべて人間都合で行います。だからこそ常に天道の自然に対して人道の都合が発生しますから常に手入れをしては修正を入れていなければ成り立ちません。

道路が傷むのを修繕するのも、崖が崩れないように保善するのも、また川に堤防を築くのも常に人間に都合が悪くならないように行っているのです。

これと同じく人間は常に自分を中心に物事を考えますから知らず知らずのうちに自分にとって正しいと思い込んだものに勝手に修正をしてしまうものです。つまり自分にとって役に立ち価値があるものだけにしていこうとしていくということです。

実際は人間は一人ではありませんからその人に都合が良くても相手には都合が悪いことが多々あるものです。そこで人間の世界ではルールというものを設けます。人間の都合は多勢に無勢か権力に左右されることが多く、結局は自分にとって都合が良いことを強く言う人に押し切られてしまうことが多いのです。今の政治を見ても一目瞭然ですが、その人物や一部の益がある人たちが優先されるようにルールを設けるのです。

人間がお互いの都合に折り合いをつけることができなくなればなるほどにルールは無限に増えていきます。しかしそうなると息が詰まるような人間関係の中で、お互いの権利を主張し合ったり制度だからと胡坐をかいては自分の都合ばかりを求めるようになり信頼関係が崩壊していくものです。

信頼関係というのは、お互いの都合をお互いが理解し合い、そこに思いやりという物差しを使って折り合いをつけていくことで積み上がっていくものです。それをどちらかがだけが我儘に自分の都合を押し切っていたら、信頼関係は崩れていきます。

それは人道というものが、お互いの都合で動いているものであるからなのです。だからこそこの手入れというものは、人道の最大の仕事といっても過言ではないと思います。

常に自らを修正し、周囲の都合を確認しつつ思いやりをもって自分を役立てていくということ。つまりは自分に役に立つかどうかで判別しているのが人間だからこそ、自分が役に立てるようにと常に自分が社會に役立つように所属する組織に役立てるようにと手入れをしていけば信頼関係はより強く絆も深くなっていくように思うのです。

人は信頼関係の中で自分を役立てているときがご縁を感じて幸せを実感できていることが多いように思います。自分の都合をどれだけ手放していくか、自分優先の欲求をどれだけ転じてみんなの善いことにしていくは、人道の精進なのかもしれません。

「自分がしてほしいことを他人にし、自分のしてほしくないことは他人にはしない。」これがまさに人道における至言なのでしょう。

自他一体になるほどに、自分が相手の御役に立っているという実感は自他を分けずにいる実践を行うということです。自我感情が見る目を邪魔をしたり、相手のことを気にしすぎたりするのは都合で分けている証拠ですから常に手入れをして人道の精進を積み重ねていきたいと思います。