お布施行のお誘い

英彦山の宿坊、守静坊の甦生もあと少しとなりました。終盤に入ればはるほどに多くの方々からのご支援や見守りに感謝する時間が増えていきます。最初は、どうなるかと思いましたが費用面などは解決していませんが建物の方は見事に甦生してきました。初心を忘れずにここまでこれたこと、そして家も本当によく頑張ってくれています。こういう機会を与えていただけたことに何よりも深く感謝しています。

これからいよいよ宿坊から人の繋がりの方に入っていきます。

その第一の取り組みとして宿坊の屋根を今のトタンから本来の茅葺屋根に戻すという作業がはじまります。そもそも現代からすれば逆行するように見えて、周囲も予算がないのに何でこんなことをといわれますが私にとってはこの茅葺屋根の甦生こそ宿坊の原点回帰になると信じています。

そもそも屋根というのは、家の最も大切な場所です。屋根の御蔭で私たちは暮らしを安心して営んでいくことができます。その屋根に何を据えるのか、そしてどのように屋根をつくるのか、これが大切なことなのです。

私たちは古来より、人のつながりの中でみんなで助け合ってここまで生き延びてきました。決して一人では生きてはいけません。いくらこの世が個人主義になって自分が自分がと前に出ても実際には誰も一人では存在できません。だからこそ、私たちは社会を創っているともいえます。

今、コロナや戦争でどこか影を落として心身も少し元気がありません。こういう時だからこそ、みんなで助け合うという場が必要で、そのことに由って社会もまた明るく清らかになっていくように思うのです。

私たちは古来から、穢れを祓うという精神性を持っています。どんよりもしても、また清らかに素直に明るくいようとみんなで和気あいあいと一緒に利他に生きる喜びを楽しむのです。

茅葺屋根は、むかしは村のみんなで持ち回りで何年かごとに村人総出で屋根の葺き直しを手伝っていました。新築であれば、みんなで祈り棟上げをし村のみんなで子々孫々まで発展していけるようにと祈りました。

こういう日本人の心の原点の中にこそふるさとはあります。

私が、ふるさとを甦生するときは必ずこの茅葺屋根を葺いていた時代の「結」(ゆい)を思い返してその風景を甦生するところにこだわるのです。今回は、親友の阿曾茅葺工房の植田さんのところで茅を刈り取るところからみんなで参加したいと思います。

阿蘇は茅があるから懐かしい風景が残ります。野焼きによってまた見事な茅ができます。西の横綱とも呼ばれる阿蘇の茅は丈夫で美しいのです。この暮らしの営みの中で茅葺を葺くことを学ぶことは、単に私たちが原点回帰するだけではなく、心のふるさとを思い出すことによって元氣をいただけるように思います。

そしていよいよ4月2日には、みんなで英彦山の守静坊で茅葺屋根を葺き替えます。英彦山を懐かしい未来にして心のふるさとを甦生し、そこで日本全体を元氣にしていく種火になっていきたいと願います。

お布施行をご一緒できるのを心から楽しみにしています。