徳積帳のリリースに向けて

ブロックチェーンによる徳積帳の開発が終盤を迎えています。長い期間をかけて開発してきたものですが、とてもシンプルで素晴らしいものになっています。私はもともと複雑なシステムが好きではありません。それは聴福庵と同じように、とても素朴で落ち着き、そして静かな佇まいであることに仕合せを感じるからです。

同時にシステムもまた、シンプルであればあるほどに美しく穏やかな佇まいを持っています。もともとシステムもものではなく、いのちがあると信じています。これは故高橋剛さんのコードをかく指先からもいのちが宿るという遺言に照らしたものでもあります。

私は故あってブロックチェーンに深く関わることになったのも故高橋剛さんとのご縁からです。目には見えませんが、人のつながりの中にはご縁が結ばれていてそれを辿り一つ一つを丁寧にカタチにしていくだけです。何かの目論見や企画があるのではなく、ご縁で産まれたことを丁寧に紡いでいく。

そうすることで自分の今が充実し、今が未来を充実させます。予定調和という言い方もありますが、私たちは今できることを今やっているだけということでしょう。

徳積帳は、私が古民家甦生で取り組んでいる「結」の仕組みが根本になっています。この結とは、むかしからある日本の伝統的な相互扶助の仕組みです。それを私が英彦山の宿坊の甦生でも取り組んできました。結を実践してきたからこそ、DAOの本質も理解し、今回の徳積帳が開発できました。

現在は、唯脳論ばかりが先行して脳ですべてを完結させようとしています。実際には脳で思ったようにはならず、現実にはあらゆる問題が発生し、さらにテクノロジーの発展の方向性の行く末も気になります。

だからこそ、先人の生き方に倣い、この時代でも何が大切なのかをこの時代に生きる私たちが実践して子孫たちにやって見せる必要があると思うのです。もしも聖徳太子がこの時代でやるとしたら、菅原道真がやるとしたら、二宮尊徳がやるとしたらと考えてみるのです。

日本人は自然への畏敬を忘れずに、暮らしの中でテクノロジーを磨いてきました。この比率は変えてはいけません。私はこれから世の中に徳積帳をリリースしますが全国展開やFC展開など事業は考えていません。本来のあるべき姿、そしてどう生きることが真の豊かさや仕合せなのかをテクノロジーとの真の調和を伝承していきたいと思っています。

地味にはじまりますが、1000年先に残るような今を紡いでいきたいと思います。