職人気質

「職人気質」という言葉があります。これは「しょくにんかたぎ」とも呼びます。気質というのは、元々は「布や紙をあてて模様などを染め付ける、模様や文字を彫りつけた板」を 「形木」 (型木)からきた言葉だといいます。つまりこれが原型や手本、型を指し、性質という意味になりこれが気質(かたぎ)と呼ばれるようになりました。

そして職人気質は、職人に特有だと言われる気質のことです。また職人の定義は、自ら身につけた熟練した技術によって手作業で物を作り出すことを職業とする人のことだといいます。

自分もどちらかというと職人気質のタイプで、一つのことに取り組むと徹底的にそれを深めて修練したくなります。しかもどの分野でも好奇心があるので、何でも取り組もうとします。たくさん失敗してみたくなり、自分の納得する理想の状態まで何度でも何時間かけても面倒でもやりたくなるのです。

人生は短く、やりたいことが膨大にあっても実際には優先順位を決めてほとんどを手放していきます。どうしてもこれだけはと決めたものだけは諦めずにコツコツと作りこんでいきます。

私は古民家甦生などにも関わる関係で周囲はみんな職人ばかりです。色々な職人を見てきましたが、伝統に関わる人たちにも色々な人がいます。お金や効率を優先する人、純度の高い気持ちで損得度外視で取り組んでいく人、すぐに妥協していく人もいれば、年数関係なく納得いくまでやり遂げていく人もいます。色々な人がいますが、これは職人かどうかというよりも気質の問題です。

私が好きな気質の人はみんな本質的な人たちでした。目的に適ったものができるかどうか、本気で考えて実直に取り組むのです。私はこういう人たちこそ、ものづくりに関わる人たちのお手本だと思っています。私もその人たちに相応しい仕事ができるように、徹底して妥協せずに精進しています。

では職人の部分はというと、熟練した人たちのことです。これはその物と対話をし、その物と一体になり何度も何度も改善と精進を積み重ねて磨き上げられた技術を持った人たちは智慧を持っています。この智慧はまさに神のごとく、人智を超えている能力を持っています。自然が形成していくいのちの造形に近い何かをつくっていくのです。

まさに絶妙に一期一会に、そのものを完全無比に仕上げていきます。その心境はまさに自然と一体、そのものとの和合です。どの分野においても、熟練した人たちは存在していてその人たちの御蔭で私たちはこの世に最も美しいものを創造してきました。

謙虚さや素直さ、そして諦めずに信念をもってやり抜く心技体を持っている人間性の高い人たちです。

職人気質とは、そういう意味で「人間性が高い、お手本になる人」ということなのでしょう。私も、残りの人生どれだけのことをやり遂げられるかわかりませんが持ち前の職人気質を磨いて子どもたちに型を遺していきたいと思います。

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