微生物から学び直す

私たち人間は微生物でできていますがこの微生物はまだまだ未知の存在です。宇宙空間の過酷な環境で数年間生き延びている微生物もいれば、極限環境微生物といって強烈な酸性、放射能、高熱高温、あらゆる極限環境でも生存しているのです。人間であれば、即死するような環境であっても微生物は生き延びていきます。

もともと私たちの生命はどこからやってきたのか、突然湧いたという説もありますがどこからの宇宙から飛来してきたという説もあります。これをパンスペルミア説(パンスペルミアせつ、panspermia)ともいいます。これはウィキペディアによると「生命の起源に関する仮説のひとつである。生命は宇宙に広く多く存在し、地球の生命の起源は地球ではなく他の天体で発生した微生物の芽胞が地球に到達したものとする説である。「胚種広布説」とも邦訳される 。またギリシャ語で「種をまく」という意味がある。」とあります。

キノコのコロニーのように、小さな微生物たちが集まり形をつくり胞子を撒いて拡散していく。この仕組みで宇宙空間を漂い、あらゆる星々の間を移動しながら自分たちに相応しい生命環境の中で独自の進化を遂げていくというものです。

先日もカビのことを書きましたが、私たちの生活空間には常にカビや微生物が漂っていて根付けるところに定着してそこでコロニーをつくり育ち拡散していきます。同様に、宇宙でも一部は仮死状態になりながら漂い、また最適な環境下にうまく漂い定着できることができればそこで生命活動を活発にさせていくのです。

人間の体内は微生物でできていますし、小腸をはじめあらゆるところで私たちは微生物と感情などを調和していますから微生物が私たちの根源ということも直観することができます。

その微生物たちは私たちの知らない宇宙を知っていて、遠く離れた星からあらゆる銀河を漂い星々に散らばってやってくると思うと何ともいえない不思議なロマンを感じます。

このあらゆる極限状態でも生きられるとするならば、そこでコロニーをつくり定着したものが宇宙人ということも予想もできます。例えば、酸素のない環境下でも生きられる進化を遂げる私達みたいなヒト型のものもあるかもしれません。あるいは、苔や植物のような形で進化したものもあるかもしれません。地球のように水が豊富な環境ができれば、星々はひょっとしたら地球型の微生物群が増えていくこともあるかもしれません。

そんなことを考えていたら、私たちのルーツはどこからやってきたのか。そして多様性は何を根源に今に至るのか、そして進化とはいったい何かということも仮説を立てることができるように思います。

科学が進めば進むほど、宇宙の偉大さ、その設計の美しさ、素晴らしさに魅了されていきます。一緒に生きる存在、共に一つである生命は微生物たちから学び直せます。

子どもたちのためにも微生物の存在に目を向けて、微生物から学ぶ姿勢を忘れないようにしていきたいと思います。

文化の甦生

最近、文化財のことについて考える機会が増えてきました。ウィキペディアには「広義では、人類の文化的活動によって生み出された有形・無形の文化的所産のこと 。「文化遺産」とほぼ同義である。」、「武力紛争の際の文化財の保護に関する条約 、 文化財不法輸出入等禁止条約 、文化財の不法な輸出入等の規制等に関する法律などの条約および法令において規定されている「文化財」のこと。」、「日本の文化財保護法 第2条および日本の地方公共団体の文化財保護条例において規定されている「文化財」のこと」とあります。

シンプルに言えば、人類の伝統や歴史において政治的にも学術的も希少なもので価値があり文化財と判断されるものが文化財ということになりますが文化財は見方を変えればこの世のすべてが文化財ということになります。

特に希少になってくればほぼ文化財のように扱われていくものです。大量に生産できて大量に余っているものはいくら文化財でも価値があまりないように扱われます。もしくはお金にならないもの、復元できないものもまた一つの文化財です。

この文化の「財」とは、貴重なものや価値のあるものを指します。貴重であると思えるものや価値のあるものだけが財とつきますが本当に貴重なもの、価値のあるものが何かと定義するものの違いではまったく文化財の内容も変わってくるのです。特に時代が異なれば、文化財の価値も変わっていくでしょう。それだけ変わり続けているものが文化財ということになります。

例えば、何百年も前からの古民家で歴史的な何かがあった建物であっても時代が異なれば無価値になるものもあります。平和な時代の建物と戦乱の時の建物でも価値は異なります。その時代時代に変化していくものだから、その時代に相応しい活かし方があります。その活かし方もまた文化財になる日もくるでしょう。つまり、ただ保存し、ただ時を止めてその建物を守ってもそれが文化財ではないということです。

私たちはどのようなものであっても、その時代に生き、その時代を舞台に活躍していくものです。活躍するための場としての文化があるのであり、文化が先ではありません。

何をどうするかは、その時代の価値観や人の存在、そして時の持つ出来事に左右されていきます。本質をよく観て何がもっとも大事なことなのか、そして今をどうするのかからよく議論していく必要があるのです。

子どもたちのためにも、新しい文化の甦生を取り組んでいきたいと思います。

健康で長生きするための智慧

先日から酪酸菌のことを書いていますが、この酪酸菌はウィズコロナには欠かせない微生物であるのは間違いありません。戦前に日本人にはほとんどアレルギーがなかったといいます。それは食物繊維をたくさん摂取していたからだともいわれます。

つまり酪酸菌の餌は、その食物繊維であり食物繊維を多く食べていればそれだけ酪酸菌も元氣になるというものです。日本人の伝統的な食事の智慧にぬか漬けがあります。このぬか漬けこそ、酪酸菌を元気に増やし代謝を高める効果があります。私たちが腸から大事な栄養素を取り込むのにこの酪酸菌が多くの役目を果たしています。

具体的には(鶴見隆史著「酵素」の謎)にこうあります。

酢酸、プロピオン酸、酪酸の短鎖脂肪酸は水溶性の食物繊維や糖質の発酵で生じる物質で、その働きが人間の免疫力を上昇させたり、健康を向上・維持させるうえでたいへん重要ということで、最近大きな注目を集めてきています。酢酸は、脂肪合成材料です。プロピオン酸は、肝臓における糖新生の材料として使われています。酪酸は、大腸の主要部分の栄養素となります。これらは、95パーセントは大腸粘膜から吸収され、すべての消化管と全身の臓器の粘膜上皮細胞の形成と増殖を担い、粘液を分泌させる働きをしています。 胃液も腸液も膵液も胆汁もすべて短鎖脂肪酸がつくっており、大腸粘膜など100パーセント、短鎖脂肪酸をエネルギー源としています。 この短鎖脂肪酸の一番の材料は、熟した果物、わかめ、昆布などに含まれる水溶性食物繊維です。 穀物、大豆、きのこに含まれる不溶性の食物繊維も材料になります。 ほかには黒酢、酢、梅干し、ピクルス、酢の物、ラッキョウ、漬物、キムチなどの発酵食品も短鎖脂肪酸の材料になります。」

つまり私たちの腸ではこの食物繊維を分解するという機能が備わっていて、長い年月をかけて食べてきた食生活に対して微生物と共生する関係を結んできたともいえます。その長い関係を結んできた微生物が私たちの身体を病気から守り健康にしていますから、いくら時代が変わってもその微生物たちがいつまでも共生してくれるように食生活を保つ必要があります。

例えば、もしも宇宙に人間がいってどこかの星で生活したとしても腸内の微生物たちは今までと同じような食事が必要になります。食物繊維のないものばかりを食べてしまえば腸内環境が崩れてしまい共生が維持できず健康が維持できません。

私たちは人間だけで生きているわけではなく、様々なものに「生かされている」のですから微生物に生かされている私たちは微生物を生かす役割を持っているのです。そうやって全体循環の中でいのちはめぐりますから、好循環を維持するためにも何が好循環を保つのかを私たちは知っている必要があるのです。

子どもたちのためにも、健康で長生きできる智慧を伝承しつつ古来からの体内の微生物たちがいつまでも一緒に健康で長生きできるように暮らしフルネスの中で実践していきたいと思います。

根源は免疫、原点回帰

私たちの身体には、免疫というものがあります。これは病原体・ウイルス・細菌などの異物が体に入り込んだ時にそれを発見し体から取り除いてくれるという仕組みのことです。そしてこの免疫には自然免疫と獲得免疫というものがあります。

まず自然免疫は、生まれつき体内に備わっている免疫の仕組みで元々古来から存在する機能です。これは発見した異物を排除する仕組みです。有名なものに好中球と、NK細胞、マクロファージがあります。このどれも、外部からのものをキャッチして食べて無効化していきます。

そしてもう一つの獲得免疫は、人生で病原体と接触した際に再び感染しても発病しないようにする仕組みのことです。この獲得免疫は、侵入した異物を排除するだけでなく記憶細胞という特殊な機能をもつ細胞に変化し記憶しています。そうすることで、いち早く発見し感染が進む前にキャッチして食べてしまうのです。T細胞とB細胞が有名です。

インフルエンザで例えると、ウイルスが口や鼻、喉、気管支、肺などに感染した場合はまず自然免疫のNK細胞とマクロファージ、樹状細胞などがウイルスをキャッチして食べて駆除しはじめます。そしてそれでも駆除できない場合は、B細胞、キラーT細胞という獲得免疫が今度は活動を始めます。具体的にはB細胞は抗体を作り、その抗体はウイルスにくっついて他の細胞に感染できなくなるといいます。

そうやって私たちの身体は自然免疫と獲得免疫の合わせ技で撃退してくれていたのです。無症状の人がいるというのは、この免疫系が働き無害化させているからということになります。免疫がきちんと働いているのなら、外部からの異物は正しくキャッチされ、駆除され記憶され、ずっと身体を守り続けてくれるのです。

これからコロナウイルスも様々な変異株が誕生してきますし、その都度、ワクチンを開発して対応ではいたちごっこです。私たちの身体は大量のウイルスに日々に晒されていますからやはり今まで生き残ってきた力を磨いていくのが一番です。

その方法は、食生活、運動、睡眠、精神や心の安静、という基本、また体質改善、生活習慣の見直しでできるはずです。つまり暮らしを整えていくのです。暮らしフルネス™は、これらのことを実践するためにも欠かせない智慧の仕組みです。

引き続き、子どもたちのためにも暮らしを見直して伝承していきたいと思います。

微生物を尊重する暮らし

腸内フローラを活性化することで免疫を高めていくというのは、むかしからの感染症予防法の一つです。もはやコロナウイルスは変異し続けていきますし、海外から強力な新種が次々と入ってきますからワクチンや薬ではいたちごっこの様相です。

気候変動も重なりますからますます新手の病気や感染症は増えていくばかりです。こうなってくると自己免疫を高めていく方法しか手段がありません。今の私たちが生存しているということは、今までも自己に備わっている免疫があったから乗り越えてきたともいえます。

この時代は免疫を下げるような生活環境の中で私たちは暮らしています。こういう時だからこそ、免疫を上げるような本来の自然と共生する仕組みを学び直す必要性を感じています。

私たちが免疫を高めるということで最初に思いつくのは、腸内細菌です。腸内フローラが豊かでしっかりとしている人は健康で免疫も高く元気な人も多いといいます。私たちは微生物によって身体を守っていますから、お腹の中の微生物の状態がよければよいほど免疫を高め外部からの感染症のウイルスなどの侵入を防いでくれます。

如何に日々の生活の中で微生物を上手に取り込むかが鍵になります。本来は微生物は空気中も浮遊していますし、自然界の土やほこりの中にもたくさん存在しています。そういったものを日々に取り入れていけば免疫も高まるのですが、食事から摂取するのがもっとも効果的な方法です。私たちは微生物にご飯を食べさせることによってその代謝物をエネルギーや栄養に換えていますから微生物が喜ぶようなものを食べてあげるのが一番です。腸活といい方も今ではしていますが、微生物を尊重する暮らしをしていくことがもっとも免疫を高めてくれたということでしょう。

今、まさにその微生物でもコロナウイルスに効果があるのが酢酸菌(さくさんきん)だといわれています。この微生物は乳酸菌や納豆菌と並ぶ食用の発酵菌の1つです。この酢酸菌は、アルコールを酢酸に変える細菌の総称でお酢になる元です。なので英語では「Mother of vinegar(お酢の母)」とも呼ばれています。

この母なる存在が非常に大きな働きを腸内で行ってくれているのです。どこにいるかといえば、空気中にもいますが梅、ぶどう、柿、りんごや花、はちみつなどにもあります。具体的に酢酸菌をつかった発酵食品には、お酢やワインビネガー、コンブチャ、ナタデ・ココやカスピ海ヨーグルトなどもあります。日本では、黒酢、柿酢、リンゴ酢などあらゆる酢に存在しています。

特に素晴らしい効能は、アレルギーに効果があることです。花粉症をはじめ、あらゆるアレルギー反応を穏やかにする力があります。科学的にも腸内菌叢により産生される短鎖脂肪酸(酪酸、酢酸およびプロピオン酸)という物質が腸管上皮細胞の増殖促進、炎症性サイトカインの抑制作用等による抗炎症、抗潰瘍作用もあると報告されます。

つまりコロナウイルスは、免疫の過剰反応が影響しますからそうならないように予防し続けることで重症化を防ぐことができるかもしれません。先人たちの智慧を活かし、子どもたちに安心した環境が遺せるように自然から学び続けていきたいと思います。

暮らしの定義

英彦山の宿坊の甦生をはじめるにあたり、何を初心にするかということを再確認しています。もともと私は子どもたちの1000年後のことを憂い今、何をすべきかを考えてカグヤという会社を起業しました。そして、子どもの憧れる生き方と働き方を伝承していこうとし、暮らしフルネスというものを定め、その場を磨いています。

そもそも暮らしというものは何かといえば、人間の生き方を表現する場のことです。

例えば、僧侶が暮らせばお寺になるし、山伏が暮らせば宿坊となります。現在は、仏教が檀家制度をとって墓地や葬式などの形態がメインになって場のようにいいますが本来、仏陀がいた頃のお寺とは僧侶たちが住みそこで仏の生き方を実践した場がお寺のはじまりの姿だったといいます。

なので私の思う暮らしの甦生とは、どのような生き方をするのか、そしてどのような働きを実践するのかを日本人の先人先達たちの姿から学び直しその徳を現代につなぎ直そうとしているのです。

本来、暮らしそのものはその人の持つ人間性や精神性、魂が現れてくるものです。その人がどのような生き方をし実践するかが丸ごとすべて詰まっているものが暮らしです。何を大事にしているか、どのような想いを育てているか、そして何を実現しようとしているのか。その一つ一つが、暮らしを通して場に感化されていくのです。

だからこそその場には、その人の暮らしの真心が薫ります。

現代は場をすぐに環境というものの言い方で置き換え、最近では見た目が華やかであればその場がさも価値があるかのように広報したりします。これは営利のためです。しかし本当は、場には人が着いているのであり主人の生き方が中心になっているのですから自然に薫ってくるものなのです。

お寺であれば坊主、宿坊であれば坊主、庵には庵主がいるように、主人の生き方があっての場であるということです。その場があることで、私たちの風土や国土はさらに歴史を重ねて磨き上げられ国宝となっていきます。

残念なことに今の建築というものも専門家によって美術品のようなハコモノになってきていますが本来の建築は主人がいのちを吹き込んでいくものです。建物と主人は決して分業し切り離せるものではなく、主人が代わり続けても生き方が変わらないから建物としての場が甦生し続けているのです。やはり肝心なのは主人の存在であるのは間違いありません。これはすべてに言えるのです。

家であれば家主がどのような暮らしを実現するか。そこに場があります。むかしは修練する場を道場といいましたが、今は西洋文明が覆いかぶさりましたから場と道が逆転している時代です。だからこそ原点回帰し、場道と名付け私はその生き方を暮らしフルネス™と定義したのです。

子どもたちが1000年後も安心して立命できるよう、見守り続けられる場を醸成していきたいと思います。

湿度から学ぶ

日本の風土は高温多湿です。この時期の平均湿度は74パーセントくらいあるといいます。私の今居る家も、大雨が降り始めましたが湿度は84パーセントあります。これは空気中の水分がどれくらいあるかを示したものです。

私たちの身体は、自分にとって快適な体温を一定に保つために常に気温や気候に合わせて活動をしています。暑くなれば冷まそうとし、寒くなれば温めようとします。この変化が激しいと、それだけエネルギーを必要とするためかなりの負担が身体に生じて夏バテや熱中症の原因にもなるといいます。

一般的に私たちが快適と実感する湿度は40%から60%といいます。40%を切ってしまうと肌や目などが乾燥し、インフルエンザウイルス等が活発になります。そして逆に60%を超えてしまうとダニやカビが活発になります。

湿度によって、ウイルスやカビが活動しますから常に湿度を一定に保つための工夫が必要になってくるのです。現在の住宅では、気密性が高く部屋の空気はこもっています。なので除湿すればすぐに乾燥し、水分が増えればずっと残ります。本来、微風が通れば自然に湿度は一定に保たれるのですが風が通らなくなるとあっという間に湿度の管理は難しくなります。

伝統的な日本家屋は、この湿度との関係を常に意識して設計されてきました。また家屋に使われる材料もどれも湿度を意識したものばかりです。例えば、障子、土壁、畳、建具に囲炉裏などどれも湿度を調整するためのものです。

湿度が高すぎるときは吸収し、低すぎるときは加湿します。つまり車のハンドルの遊びのように、変化が緩やかに発生するように調整する役割を果たしているのです。あとは、もともと隙間が多く、ほとんど外界とつながっているような建て方をしていますから常に風が通り、そのうち快適な湿度に回復して保つようになっているのです。

そうはいっても、梅雨前線が停滞して暑さが厳しいときはどうしようもありません。そんな時は、きっと窓を開けてあとは拭き掃除をしてカビが発生しないようにしたのでしょう。それに冬の極度の感想には、囲炉裏で常にお湯を沸かしてお茶をたてて対処したのではないかと思います。自然と共生していたころは、私たちは湿度を身近に感じて暮らしを営んでいたように思います。

都会では、総合空調で空気清浄機でコントロールされているためあまり湿度とかカビとかウイルスとかも気にすることはありませんでした。しかし田舎に暮らし、伝統的な家屋に住むと如何にそれらが身近であったかを実感します。

見方を変えれば、湿度の御蔭で発酵食品は保存でき、ウイルスなどの予防になり感染症を抑えてくれるということでもあります。それに湿度の変化で身体は常に五感やエネルギーを使いますから自然にお腹もすいて美味しくご飯が食べることができます。

健康を考えたら、自然と共生する仕組みを活かしている暮らしの方が快適に安心して長生きできるように思います。子どもたちに、湿度との関係から学び直すことを伝承していきたいと思います。

自然から学ぶ

自然物を観察していると、如何にそれが発明に満ちているものであるかがわかります。虫も植物も、また微生物にいたるまで、なぜそのような能力を持つのか、そしてその形状になっているのかを観察するほどにその発明のすごさに感嘆するのです。

私たち人類は、飛行機をつくり空を飛び、新幹線をつくり地上を高速で走りますが虫や魚たちはもっと以前からその能力を持っていたことがわかります。他にも近代科学が追いつこうとしているものは、すでにほとんどが自然の中に存在しているものです。

長寿の仕組みも、毒を解毒する仕組みも、ミイラから蘇生する仕組みも、すべて自然界のものがすでに発明済みのものばかりです。むかしの人たちは、その自然界の発明したものをうまく真似し、時には取り出してそれを暮らしの智慧として活かしてきました。

人間が傲慢にならず、よく自然を観察したからこそ発見できたのであり、発明したわけではないのです。謙虚に物事の本質を見抜けば、この世の発明はすべて発見であるということでしょう。

発見するためには、よく自然を観察する洞察力や探求心が必要です。なぜ、それができるのか、なぜこうなっているのかと自然の仕組みを解明するための意識が磨かれている必要があります。

自然にそうなったのは、なぜ自然にそうなったのかという原点回帰を知ることです。

私たちの好奇心は本来、あらゆる自然の姿に向いているものです。それが知識を得ることで自然への観察が劣化していきます。また当たり前すぎるもののことを人は考えることがありませんから、当たり前のことをちゃんと見直してみる学問への姿勢が求められます。

身近な虫一つからでも、身近な出来事一つからでもなぜ自然がそうなっているのかを観察すればするほどに驚きの連続です。自然物はまさに、神様や創造主の智慧そのものであり私たちには真似できない奇跡の仕組みと働きをもっています。

子どもたちには、自然から学ぶことの大切さを伝承していきたいと思います。

カビから学ぶ3

カビのことを深めてきましたが、最後にはやっぱり日本の国菌である「麹菌」(学名:アスペルギルス オリゼー)を書いておきたいと思います。この国菌は2006年、日本醸造学会によって「われわれの先達が古来大切に育み、使ってきた貴重な財産」であるとし「国菌」に認定してからのものです。

このカビは、和食を支えているカビであり日本人の健康を支え続けてきたカビです。日本酒、漬物、味噌、醤油、みりん、酢、甘酒、あらゆる日本の代表的な和食の発酵食品をつくりだすことができます。

このカビは、日本にしか存在しません。日本の風土の中で時間をかけて育ってきたもので海外では育たないとも言われます。このカビの菌は、分類わけされると5種類あるといいます。黄麹菌(きこうじきん):味噌や醤油、白麹菌(しろこうじきん):焼酎、黒麹菌(くろこうじん):泡盛、紅麹菌(べにこうじきん):豆腐よう、鰹節菌(かつおぶしきん):鰹節という具合です。

この麹菌はカビですからそのものを食べるわけではなく、麴菌の代謝で作られた成分を食べるのです。この代謝物は酵素ともいい、たんぱく質をアミノ酸に分解する「プロテアーゼ」や、でんぷんを糖に分解する「アミラーゼ」、脂質を分解する「リパーゼ」など、たくさんの酵素を生成していきます。その御蔭で、人体に有益なビタミンB群、必須アミノ酸やミネラルそして食物繊維などが摂取できるのです。

実はこのカビは、むかしは非常に人間に有毒であったといわれます。他のカビと同様に、毒をもち、悪影響を与えていました。説として有名なのは、アスペルギルス・オリゼーによく似た「Aspergillus flavus(アスペルギルス・フラバス)」という種類がいます。この アスペルギルス・フラバスは猛毒であるアフラトキシンを生産することで有名です。この猛毒を生産するアスペルギルス・フラバスを日本人が無毒になるまで育てたことで誕生したのではないかといわれています。それが私たち日本の国菌の由来でもあります。

つまり「和」を保つ、和にする力、和食を支える麹菌は、猛毒を無毒にするまで一緒に育て上げた共生の結晶ともいえます。日本人の先人たちは、家畜といって動物を大切に家族のように扱い暮らしてきました。牛や馬、鶏や犬などももともとは野生で狂暴だったものが愛情深く育てて関わることで人間と一緒に暮らしていくものに変わっていきました。

今でいう養殖は、養鶏などをみても狭い場所で厳しい環境ですがむかしは家の周囲で同じ家畜として一緒に豊かに暮らしを営み、助け合っていました。

日本の和を支えるというのは、この伝統的な日本人のいきものやいのちに対する思いやりであり、それをもって有毒などものを無害化し、敵対していたものも仲間にしていくのです。

私は世界でこの日本の「和の心」は、現代のアップデートすべき人類の方向性や生き方にとても重要な役割を果たすと信じています。だからこそ、暮らしフルネス™を実践し、暮らしからそれを子どもたちに伝承していく必要を感じるのです。

すべてを敵視するのではなく、一緒に地球に暮らす仲間としてどう調和して暮らしていくかをこれからも私たちは生き方として学び直していくことは欠かせません。先人たちの和の心を継いでいきたいと思います。

 

カビから学ぶ2

カビのことを深めていますが、カビは人類にとっても世界にとっても必要な存在であることがわかります。地球の約4割ほどに存在する理由は、カビが地球にとってとても大きな役割を果たしているからです。

昨日も書きましたが、カビは細菌でも植物でもなくキノコや酵母と同じ真菌類です。この真菌類は、細菌とは違って細胞の中に遺伝子を納める核を持っています。そして分解することによって生きています。

つまり、この地球の循環において分解するという何よりも重要な働きをしているということになります。私たちの今の社会は分解する生き物に容赦ない仕打ちをしていきます。

例えば、ごみ問題も分解できないようなプラスチックなどの素材をつくります。他にも防腐剤や防カビ剤、抗菌剤などをつかい、徹底的に分解させないようにします。コンビニのおにぎりや菓子パンなども、ほとんどカビがつくことがありませんからそれだけ薬品漬けにしているということです。

私の小さい頃は、おにぎりもパンもあっという間にカビが生えて食べれなくなりました。テーブルの上に食パンを置いていたら、ものの数時間で水気がとんでそのあとカビがびっしりと生えて気持ち悪いと何度も捨てていました。今では数日経ってもそのままですから違う意味で気持ち悪さを感じています。

分解というのは、動物でいえばカラスなど、虫だと蟻などもあります。もしもこの世に分解する役割のものがいなければ地上は死骸だらけで溢れてしまいます。ちゃんと土に帰す存在や、もう一度、いのちの巡りを促す働きをする存在があるから私たちは地球で共生していくことができるのです。

カビは敵にして排除するのではなく、人類にとって善いものは積極的に取り入れて、害のあるものは予防して増えすぎないようにすることがカビとの上手な付き合いになるということでしょう。

上手に付き合うには日ごろからの小まめな掃除、風通し、湿度を発生させないように工夫することなどがあります。どうしても日本の風土は高温多湿でカビの天国のような環境です。なのでカビが多いというのは運命的です。これは自然の仕組みですが、最初から戦っても勝てないとわかっているのならできる限りその敵対する状況を避ける戦略をとるということです。

一つは、天敵と出会えば逃げるが勝ち。そしてもう一つは、運命的であれば予防するというものです。自然界はこの智慧によって生命たちはみんな上手に暮らしを営んでいるものです。

カビは、善いものを取り入れることも予防。そしてカビのバランスが崩れないように調整して発生をコントロールすることが予防ということになります。生き物たちにとっては、分解者の恩恵を如何に享受されつつも、分解者があまり寄り付かないようにするかというバランスが鍵です。

子どもたちのためにも、いのちを壊すような化学薬品を摂取させるよりもカビと上手に付き合う智慧を伝承していきたいと思います。