本番意識

人は本番意識というものをどこまで持てるかでその質を維持していくものです。

例えば、いくら危機感を持てといっても本番だと想えといっても実際には現実がそうなっているわけではないのですから訓練というものはなかなかできないものです。何かの防災訓練でも最初は真剣にやっていても次第にそれが単なる業務のようになってきて次第に簡素化したり省力化してその危機感も低くなっていくものです。

地震や震災でもそうでしたが、3.11であれだけのことが起きたとしても数年経てば馴れが出てしまい次第に気持ちにゆるみが出てくるのです。特に目先のことに関しては人は優先して取り組みますが、本来の大事なことや長い目でみて大切なことは御座なりにすることが多いのです。

そういうものを忘れないために「訓練」というものがあるのです。

その訓練とはどのようなものかといえば、常に本番という意識が必用です。そしてその本番意識とは何かと言えば、最悪の事態を考えるということです。それは震災や天災でいえば、想像をはるかに超えるような最悪の事態を大前提として訓練をすることです。

例えば、思ってもみないことが次々に起きる。相手は自然ですから、津波も竜巻も台風も水害も火災も「まさか」と思えるようなことの状況で真剣に行えばいいのです。これはそういう災害のことだけではなく、日頃の仕事でもまさかこんなことが起きるかもしれないと最悪の事態を考えて常に本番だと真剣に遣り切ることも言うのです。

他でもうちでは毎朝、みんなで訓練しているものもありますが、最悪を想定していないで行っているものはどこか弛緩していて次第に質が低下しているものです。

人は安易に考えるところから、自分の都合を入れてくるものです。大丈夫と信じて天にお任せして生きる天道と、人事を尽くして最悪の事態を想定して最大限本気で準備して生きる人道は必ずセットで成り立っているのです。これをはき違えて、信じるから最悪を考えないとか、最悪しかないからお任せしないというのは本末転倒です。

危機管理やプロ意識というものは、自分の中にある安易な発想を何処まで削除し、油断をせずにいつも気持ちを引き締め続けていることに似ています。それは、常に自分の感覚を大事に備えて落とさないように油断大敵を戒めて初心の刷新研鑽を積んでいるのです。

体験したことを忘れずに改善するというのは、体験を尊び、その体験を高め続けて学び続けて油断なく精進を怠らないということです。言い換れば、常に今、人、出来事、ご縁、それらと自他一体、自他一如であり続けるのです。

どんな仕事や業務をするとかのその前に、自分の心構えが安易ではないか、自分の姿勢に油断があるのではないかと内に省みてそれを正していくことが実践というものです。

常に実践現場は本番であることを決して忘れず、日々の訓練、日々の鍛練、日々是道場と稽古に励んでいきたいと思います。妄想遊びのような日々にならないよう、真剣勝負の日々を味わっていくような実践を楽しんでいきたいと思います。