和楽という筋道

物事には筋道というものがあります。

これは根源的なところから考えてどうあるべきかを正したもののことを言います。

例えば、この世は循環しているのだから自分のことだけで生きてはならないとします。これはそもそも繋がっていないというものはないのだからいつも周りに感謝して善い影響を与えつづけていくことが大切だという筋道を示すものです。

このように先人たちの遺した時代時代の格言や箴言というものは、その筋道を通さない人たちが横行して世の中が乱れ、本来のあるべき姿から遠ざかったときに顕われるものです。

子ども達についてもそうですが、伝承していく中での筋道を大人が教えていく中で子どもが将来、自分たちが筋道から外れても戻ってこれるように、大きく道筋から離れないようにと親が見守る中で躾を示していくようにも思います。

日ごろのちょっとした言動や行動から子どもは筋道を学んでいくように思います。正直でいる、素直でいる、感謝でいる、謙虚でいる、そういうひとつひとつの中からこの天地自然の法理を感覚で掴み取っていくのが育成していくということであろうと思います。

子どもが本物を好きなのは、子どもは天地自然の法理を生まれながらに体得していてそれをどのように具体的に社會で活かせばいいのかを学んでいるからです。身近な大人たちの実践する姿こそが、模範やモデルになるということを常に自戒していくのが大人の役割なのかもしれません。

かつて、聖徳太子が十七条の憲法を発信して民衆にモデルを示そうとしました。役人に向けてとありますが、これは自らがモデルとしてどのような筋道を立てるのかを戒めたもののようにも思います。本来の日本人としての姿を忘れてはならぬという初心と筋道を示すのです。

漢文を現代に簡易翻訳したものですが、そこにはこうあります。

第一条
人と争わずに和を大切にしなさい
第二条
三宝を深く尊敬し、尊び、礼をつくしなさい(三宝:釈迦、その教え、僧)
第三条
天皇の命令は反発せずにかしこまって聞きなさい
第四条
役人達はつねに礼儀ただしくありなさい
第五条
道にはずれた心を捨てて、公平な態度で裁きを行いなさい
第六条
悪い事はこらしめ、良いことはどんどんしなさい
第七条
仕事はその役目に合った人にさせなさい
第八条
役人はサボることなく早朝から夜遅くまで一生懸命働きなさい
第九条
お互いを疑うことなく信じ合いなさい
第十条
他人と意見が異なっても腹を立てないようにしなさい
第十一条
優れた働きや成果、または過ちを明確にして、必ず賞罰を与えなさい
第十二条
役人は勝手に民衆から税をとってはいけない
第十三条
役人は自分だけではなく、他の役人の仕事も知っておきなさい
第十四条
役人は嫉妬の心をお互いにもってはいけない
第十五条
国のことを大事に思い、私利私欲に走ってはいけない
第十六条
民衆を使うときは、その時期を見計らって使いなさい
第十七条
大事なことは一人で決めずに、必ず皆と相談しなさい

和という考え方、つまりは調和していることを何よりも筋道としなさいという教えでありこれはそもそもかんながらの道に通じる実践を行うようにという根源を示しているのです。

私たちは常に自然と一体になって、すべてを融和しながら和楽を重んじて歩んできた民族です。対立し、二極化していくようなものではないのです。そういう在り方を具体的な憲法で示したことが尊いようにも思います。

子どもたちのことを思えば思うほどに、本来の日本人の民としてどのように生きていけばいいか、先人の智慧を今に回帰して活かしていくことではないかと思います。自分のできること、自分にしかできないことで一緒に和楽という生き方で筋道を広げていきたいと思います。