大寒こそ福

もうすぐ大寒を迎えます。この大寒というのは一年でもっとも寒い時期を指し、1月20日から2月4日ころまでをいいます。むかしからこの時機はどのように過ごしていたのか。先人の知恵をどのように伝承していたのか深めてみたいと思います。

まず大寒の朝に汲んだ水は「寒の水(かんのみず)」と呼ばれ縁起物として知られています。大寒の朝に汲んだ水は1年間腐らないと言われ、昔の人達は長期間保管していたといいます。今は水道水で塩素も入っているから腐りませんが、むかしは井戸水や湧き水などでしたからどうしても生活の中で腐ることもあったように思います。

気温が高くなるときに汲んだ水というのは、すぐに細菌が繁殖してしまいます。しかし、大寒の日の朝は凍てつくような寒さ。そしてこの時機の水は雑菌も繁殖できません。そこで大寒の水は質が良いといわれていました。

なのでこの時期に味噌や醤油、お酒などの発酵食品をつくります。いわゆる寒仕込みというものです。発酵は、腐敗するスピードよりも発酵するスピードが速くないといけません。そのバランスが調和しているからこそ発酵するのです。

この寒仕込みであれば、ゆっくりと発酵して腐敗もできず上手く菌が醸成されます。一度発酵してしまえば、あとはお手入れだけですからこの時期にこそやることが重要でした。あとは、大寒に食べるとよいものとしては大寒たまごというものや脂ののった「寒ブリ」や「寒サバ」があります。実際に寒い時期はニワトリが水をあまり飲まずエサをたくさん食べるため縁起物というだけではなく、栄養価も高いからというのもあるそうです。ブリやサバは脂がのって美味しいということです。

他にも代表的なものは甘酒があります。もともとこの甘酒も寒の水が使われていました。大寒の時期に仕込んだ甘酒は美味しく新鮮だといわていて現代でも製菓会社では、大寒を「甘酒の日」と定めるところもあるそうです。

むかしの人たちは、この寒い時期だからこそできることをやりました。まさに禍転じて福にするのです。かつての日本人は、寒いから嫌だではなく寒いからこそと善い方を観ました。そして立春を迎えます。

こういう四季折々の自然の流れに逆らわずにそれをうまく活用して善いことにし、さらなる躍進につなげたというのは素晴らしい知恵です。先人の生き方に倣い、子どもたちの憧れる生き方、働き方を実践していきたいと思います。