後継、継承、伝承の志

人間は、自分一人の代で終了することはありません。今の自分に至るまでには本当にたくさんの代々の方々がいて繋いでくださっています。その代を重ねていくなかで、私たちは様々な恩恵や徳を頂戴していきます。この身体も、そして精神も心もまたずっとむかしから繋がっているものです。

敢えて、その代で繋がったものを分けるとするのなら後継、継承、伝承というものがあるように思います。一般的には、後継者というのは引き継ぐということ。継承者というのは、受け継ぐということ、伝承者は伝え続けるということにわかれます。

例えば、私は故郷に家があります。これは両親から後継したものです。そのうえで宿坊や古民家などは自ら継承しました。本来は、そのまま朽ちていくものを拾いそれを甦生して維持活用をしています。これは継承したともいえます。同時に、英彦山での伝統的な古来の日本人の信仰の原点や聴福庵における日本人の生き方や暮らしは伝承しているのです。

後継と継承と伝承は異なります。後者になればなるほどに主体性と覚悟、信念と天命、そして私心なき志が必要です。よく世の中を見渡せば、同じように伝承に生きる人たちがいます。彼らは、伝えることにいのちを懸け不撓不屈の魂で志を結びます。見返りがなくても、自分しか伝えるものはいないのではないかというほどの危機感と意識で邁進していきます。伝承者というのは、ある意味で選ばれたものであり、自ら選んだものということでしょう。

そして継承者も志が必要です。継承者は先人の願いや祈り、思いや生き方、そして働き方、初志・初心を継ぐのです。老舗の代々が重なっていくように、社会や世の中においての大切な役割や役目を受け継いでいきます。継承するためには、単に後継するためではなくみんなで大切に見守り育てていく必要があります。乱暴に物のように扱うのではなく、その人が人間的にも成長し磨かれ、しっかりと心を継承できるように薫陶したり感化したりして継承できるようにしていきます。歴史が繋がっていくのは、先人たちの継承者対する愛情によって実現しているのではないかとも思います。

老舗といえば、昨年も老舗の素晴らしい経営者の方々にお会いしてきました。私は初代ですが、その方々18代とか、30代とか、他にも神社で128代目という方もおられました。その方々の前の方がいて、そして次の方にまた途切れずに連綿と後継されていく。その代その代で初代の志を実現して次世代に繋ぐのです。その本当に素晴らしい文化のバトンに感銘を受けました。このバトンが本物であればあるほどに、遠くまで運ばれ、人類に偉大な光を与え続けます。

私自身は、子ども第一義の理念を掲げ仲間と共に20年以上の歳月を歩んできました。それは一つの新たな道でした。この道が続いていく以上、この道を進み続けて歩む未来があります。子孫や子どもたちのことを思えば思うほどにそれを強く感じます。そしてその道は、徳に結ばれ今に至ります。

今、学んでいることの意味を忘れず丹誠を籠めて取り組んでいきたいと思います。