金剛鈴三昧

巡礼の準備をしていますが、その一つに持鈴として金剛鈴(こんごうりん)というものがあります。これは、密教の方具でチベットから到来したものです。この金剛鈴は、独鈷鈴、三鈷鈴、五鈷鈴、宝珠鈴、宝塔鈴の五種鈴の一つです。それぞれの金剛鈴は五智如来を象徴しているといわれます。

金剛鈴は持ち歩けば澄んだ音が遠くまで響くことから巡礼の際の魔除けや動物除けにもなります。また金剛鈴には、驚覚・歓喜・説法の三つの義があるとされていてこれを鳴らしていろいろな仏様や神様を供養できるといいます。この鳴らして供養することを振鈴(しんれい)というそうです。振鈴は、仏様や神様にこれからお参りしますという合図となり、仏様の説法であり、お参りする人の心を戒め、眠れる仏心を呼び起こす意味があるといいます。

またチベット密教では金剛鈴のことをガンターと言い、五鈷杵のことをヴァジュラと言うそうです。ガンターは智慧を表す女性原理として、ヴァジュラは方便を表す男性原理として用いられます。ヴァジュラとガンターはチベット密教では組み合わせで使われているといいます。

これらの音による目覚めの仕組みは法螺貝にも同様に通じるものがありますが、音の響きというのは常に今此処で全身全霊があることに気づかせるものです。その音を身体や感覚で響かせることで三昧意識をととのえることができるように思います。

特に高音で澄んだ響きを聴くと、心身は研ぎ澄まされていきます。法螺貝は、吹くことで法華経を詠む功徳があるともいわれます。金剛鈴には、金剛鈴菩薩というものがあります。これはサンスクリット語でヴァジュラ・アーヴェーシャと言い、「堅固に召入する者」という意味で一切如来たちを召入する引摂の三昧耶として現われて、鈴の音が響き渡るように全ての衆生を曼荼羅世界に導く菩薩だといいます。

音はまさに三昧の境地を開くものです。

子孫のためにも、知恵を伝承し、豊かな暮らしを三昧できるように実践と仕組みを甦生させていきたいと思います。