英彦山の水徳

現在、英彦山の宿坊で井戸さらいをしています。もう数十年も使われていなかった井戸ですから下には砂や汚泥が蓄積しています。それを取り除き、地下水脈からの水が綺麗に入ってくるようにお手入れをしています。

目測での感覚では井戸の中は目に見えるところまでは8メートルほど、ポンプで吸い上げていると水量はある程度は確保できそうです。あとはどれくらい砂や泥などで水が入りにくくなっているか、ここからは井戸に入って作業に取り組みます。

不思議なことに、ちょうど井戸をこれから取り組もうとしていたら6年前に聴福庵の井戸をお手伝いいただいた個人の井戸業者さんが挨拶に来られててまさかこのタイミングということで6年ぶりにまたお願いして一緒にやることになりました。

もう長いこと、井戸から離れたそうですが先日一緒に作業をしていたらやっぱりプロの風格で見事に井戸の道具をかき集めて準備を仕上げておりました。もう75歳になりますが、人生で掘った井戸の数を聴いたら覚えていないそうですが100本以上は手掛けたそうです。

掘る場所で全部水の個性が異なり、ある時はカナケで使えなかったり、あるいは良質ものものも出るそうです。深井戸と浅井戸がありますが、そのどちらも大変さがあるといいます。深井戸の方は、岩盤があったり、水が出なかったり、深いため掃除も大変であったり、あらゆる道具が高くついたりもあるそうです。水量もありますから、ほとんど一か八かということになっています。浅井戸の方も、水脈に中るかというのと水脈に中ったら当たったで水が大量に流れ込んできますから工事が大変だそうです。

自然を相手に仕事をするというのは、知恵が沢山必要です。そしてガッツというか、気力も必要です。井戸やさんも私が宿坊で池を甦生しているのをみて何か触発されたようで元氣が湧いてきて楽しく取り組んでくれています。

水は当たり前ではなく、自然からいただいたものです。この二日間、久しぶりに大雨が降っていますがこれが地下水になるのに世界は平均で600年くらいかかり循環するそうです。新しい水でも数日から50年、古い水は50年から5万年とか、もしくはもっと古いものもあります。

水もまた生きているということです。

子どもたちに自然の恵みを伝承するためにも、英彦山の水の徳を顕現させていきたいと思います。