未病を治す

日本ではかつて陰陽師という方々が病気を治していたといいます。この陰陽師は、もともと古代に日本に伝来してきた中国の陰陽五行説をはじめ様々な技術によって暦や天文、占いなどを管理する役職の一つになりました。

この陰陽五行説の始まりは、元々は中国神話の五帝のうちの最初の皇帝であり、漢民族の祖としても位置づけられる帝王の黄帝になります。この黄帝は、衣服や家屋、船などの工業技術を発展させ、統一的な社会秩序を形成した伝説上の君主です。そしてその黄帝の子孫である夏王朝の開祖禹王が「水は潤下し、火は炎上し、木は曲直し、金は従革し、土は稼穡する」と定めました。

ここから「五行」とは水・火・木・金・土となりその後は五元素として定めます。この五行説は後からできその前の陰陽説と合体して「陰陽五行説」となるのです。

つまり陰陽師は、この中国の伝説上の君主「黄帝」こそが始祖ともいえます。その黄帝は、「黄帝内経」という医学書をつくります。これは2000年以上の前の中国最古の医学書でありその後、400年をかけて陰陽師たちによって加筆されていく総合的な医学書です。

具体的に黄老思想の理論を主軸に「陰陽五行学説」「脈診学説」「臓象学説」「経絡学説」「病因病機学説」「病」「診断」「治療」「養生法」「運気学」があります。 そして「素問」という書物には内臓、経絡、原因、病態、根拠、診断、治療原理、鍼灸があります。

これは中国において初めて書かれた「養生書」であると位置づけられます。病気を治すだけでなくいかに病気にならないようにするか、そして薬などを頼らずに健康と長寿を実現するかということが記されます。

「黄帝内経」の中心の理念は「治未病」(未病を治す)というものだといいます。そこには「是故聖人不治已病治未病、不治已乱治未乱、此之謂也」と記されます。これは「名医とは病気を治すのではなく、病気にならないよう導く。また聡明な人とは、過ちを犯した人を諭すのではなく、過ちを犯す前に諭す」であると。まさに、現代の乱れた生活習慣とお金儲けの医療とは真逆の思想。未病によって健康を保つ、これは貝原益軒の養生訓と同じです。

話を陰陽師に戻すと、陰陽師が活躍していた時代、特に平安時代などは病気は怨霊のしわざであると信じられていました。急病人が出たらまずすぐに怨霊や物の怪が出たといい、加持祈祷から行われました。枕草子などにも急病人が出たからすぐに修験者を探しまわりようやく加持祈祷してもらって治癒したとも書かれています。

宇津保物語などでも修験者の加持祈祷で物の怪を調伏して医療行為をして治癒していたとも記されます。当時の人々の血量は、修験者の加持祈祷があってからそののち薬を服用したのが最も快復したと記されているのです。

現代の人は、そんなもの怪しいとか新興宗教なのかと訝しがり誰も信用しないと思いますが見たこともない体験したこともない、西洋の物質文明で科学的なエビデンス以外を信じないとなればそう思うのも仕方がありません。

しかし東洋医学をはじめ古代の医療では、この陰陽師による加持祈祷と医療方法で大勢いの人々が未病によって病気を避けてくることができたと思うと加持祈祷の本当の意味を直観するものです。

私も今、英彦山の宿坊で薬草園をつくり薬草サウナもつくり、加持祈祷もはじめていますが実際になぜ効果があるのかがよくわかります。それは未病によるものが前提で治癒する治療法であるからです。なので陰陽道はとても役に立つのです。黄帝の実践してきた、色々な治国や治癒はまさに伝説ではなく現実の世の中を徳治するのにとても効果があると実感しています。

私の取り組みは暮らしフルネスという言い方をしますが、これは根拠がないのではなく根拠は先人たちの智慧と共にあります。子孫のためにも丁寧に真理を紡いでいきたいと思います。

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