蒸しの智慧

蒸し料理というものがあります。一般的な焼きなどと違い、蒸し料理は栄養素が消失しないものとして旨味を残す健康的な料理として知られています。この蒸しというのはどのような効果があるのか、少し洞察してみたいと思います。

もともと蒸し料理の由来は東アジアで発達したといわれます。今から6000~7000年前の中国新石器時代に黄河流域の遺跡から粘土で作った蒸し器が発見されています。それ以前まではゆでる、煮る、焼くといった調理法が基本だったと考えられているそうです。

日本への伝来は中国東北地方、朝鮮半島を経由して3世紀頃の北部九州に入ったといいます。具体的には福岡の西新町遺跡から土製蒸し器が出土しました。

もともと土器を使った調理は、蒸しの要素があります。石を燃やしてその石に葉っぱを乗せて蒸し焼きにしていましたから縄文時代から蒸し料理のようなものはあったのかもしれません。

現在、薬草風呂をつくっていますがこの薬草風呂は蒸し風呂です。私たちの身体も蒸すことで毛穴が開き、身体が蒸気によって柔らかくなり緊張がほぐれます。これは蒸し料理を見ていたらわかりますが、野菜なども透明になって活き活きしてきます。玉ねぎなどは、透明になりじゃがいもなどもほくほくです。

お水というのは、蒸気になることで非常に粒子の細かい水分になりそれが密閉されると全体に水分が行渡ります。

畑などをし野菜をつくっているとその土の中に手をいれると蒸されているのがわかります。土が発酵しているのです。この蒸しというのは発酵と関係があるように私は思います。私たちの身体も水分を常に吸収し、それを身体から発していますが服の中では蒸しているともいえます。私たちが蒸しているのは、私たちの身体も発酵しているからです。

私は自然養鶏で烏骨鶏を飼育していますが、この土もいつも蒸しています。水分がなくなればサラサラになりますが、少し水分を入れたらまた発酵します。

蒸していくというのは、この発酵を促進させる効果があるようにも思います。御餅なども蒸してつくりますが、それが美味しさの秘訣になっているようにも思います。

色々と蒸しの智慧を深めていきたいと思います。