現在、浮羽の古民家甦生で建具を色々と調達しています。解体された古民家の建具、また実際に古民家に住み使わなくなったものを譲ってくださったもの、あるいは古材の建具専門の業者の方から仕入れています。
建具は、サイズもあれば用途も異なります。現代のようにどの住宅にも合うような量産するものではありませんから一枚一枚まったく同じものはなく個性があります。その個性の組み合わせで日本の民家は構成され和が美しくなります。
この和の美しさは、単に工芸品としての美だけではなく採光、防犯、遮音、調湿、観賞、風通し、機能性、智慧などが豊富に和合している美しさのことです。調和するとき、場が生まれます。場が生まれるというのは、それだけ調和が見事に和合したということでしょう。
私は建具は組み合わせで観ていきます。もちろんゼロからつくる場合は微細なところまで職人と話し合うのですが、すでにあるもの、古建具などは修繕をして磨いて新しくて配置していきます。つまり組み合わせをよくよく調えていくのです。
もともと建具の歴史を調べると、日本最古の建具は飛鳥時代の法隆寺金堂の板戸と言われています。そして一般的に暮らしに建具が導入されるのは平安時代の寝殿造りだといわれます。寝殿造りのときには、あらゆる建具が登場してきます。蔀などもとても印象的です。日本人らしい自然との調和、適度な自然との折り合いが暮らしに取り入れられています。
そして桃山時代から江戸時代が書院造りになります。私が取り組んでいる古民家甦生は江戸時代から明治が多いので書院造りを参考にしているものが多いです。職人たちの意匠も見事で、建具はどれもうっとりします。欄間や襖、そして板戸、帯戸、舞良戸、格子戸、あらゆるものが美しく飴色に変化した建具の美は言葉になりません。
そして明治以降になると、西洋の思想が入ってきて気密性や断熱性、アルミサッシなど入ってきて現代では3Dプリンターなどであっという間に建物は完成します。建具は、耐熱や防音ガラス、木材よりも化学加工物が増えている印象です。あっという間に田んぼがなくなり住宅地になりますし、タワーマンションなども鉄筋コンクリートで仕上げています。自動ドアで重厚な金属、西洋建築のようになっています。
日本人の木造建築技術は世界一ともいわれます。それにはそれだけの歴史があるということです。法隆寺は1300年経った今でも現存してしっかりと建っています。
自然と調和してどう生きたか、私の建築のルーツは法隆寺です。法隆寺に倣い、この国の子孫の平和をいのり今度も一期一会の場に仕上げていきたいと思います。