色を醸す

私たちが通常眺めている「色」には様々な意味が存在します。この世には、無数の色があり同じ色と思っていても自然界では千差万別な色で構成されています。私たちが馴染みの深い色には、その色の持つ歴史があり、私たちは暮らしの中でその色を眺めては心のつながりを深めていったように思います。

例えば、私は黒が好きで黒をよく使います。黒といっても、日本には数多くの黒が存在します。漆黒の黒であったり、灰色がかった黒であったり、他にも鳥羽色といった藍がかった黒があったりと、同じ黒でも色合いが異なります。

私が特に好きな黒は、炭の黒ですが穏やかな気持ちになる墨の黒は心に何かを伝えてくるものがあります。また煤から取り出す黒もまた格別です。この煤は、炭火が消えたあとののこり、その煤ですがなんともいえない深い味わいのある黒に変化していきます。渋墨という柿渋と松煙を混ぜた伝統塗料の色も、うっとりする黒を醸し出します。

むかしから色には意味があると信じられてきました。代表的なものに五色というものがあります。これは古代中国の陰陽五行説から渡来したものです。この陰陽五行説は、この世のすべては陰陽と木・火・土・金・水の五行で成り立つという思想です。

これは自然界を構成する代表的なものを分類し変化や調和を学んだのでしょう。易経や風水もこの五行を参考にされています。この五行の五色、ここから木=青、火=赤、土=黄、金=白、水=黒(玄)としたのです。

自然界の変化には色があります。例えば、先ほどの私の炭色であれば夜の暗闇の中にこの炭色は浮き出ます。同じ黒でも、闇の中の炭の黒は暖かい黒であり、見分けがつくほどに炭は存在感を出しています。また黒と赤は相性がよく、観ていると和むのは炭に火が灯ると黒と赤の絶妙な明かりが周囲を包むように照らすからです。

火と水の調和から産み出される色合いに、私たちのいのちはその何かに感応していきます。色はまた感情も顕します、あらゆる色合いのなかで私たちはまた自然に透明な色に回帰してそこからまた色が産み出されていきます。

色は私たちの変化の証であり、いのちの活動の動静や明暗を伝えるものです。自分に合った色を知ることは、自分の環境をととのえていくのにはとても大切なことです。私は和色が好きですから、古いものを磨き、深い色合いが出ているものを身近に置きたくなります。

年数がたてばたつほどに色合いは深く濃くなり、一つの色の中にあらゆる歴史が凝縮されて色が醸します。色々な人生を色々な感性と共に歩み、それを和して顕現させていく。子どもたちがどんな色を楽しんで醸していくのか、今からとても楽しみです。