国の原点回帰

日本人とはどういうものか、日本の国とは本来どうであったか、それを深めていくのに歴史があります。歴史を観直し、それまでの日本人の精神を調べていくと一つの姿が見えてきます。

時として、「国」というものを考え直すときに何をもって国というのかと考えます。国の定義は、様々で専制君主の独裁国家もあれば民主主義の国家もあります。様々な国家の姿がありますが、本来の国のカタチとは民族の姿であろうとも思います。日本人がどんな民族であったか、それが国の姿です。だからこそ国を語るとき、日本の姿とは何かということを原点から自覚していなければ本来は語れないように私は思います。

この国家というものは、どのように生きてきたかという民族の生き方でありこの民族がいつも優先してきた初心でもあります。それを理念とも言いますが、太古の昔から道が続いておりその道を守るのが私たち子孫の使命とも言えます。それが先祖代々の「道統を継ぐ」ことであり、それを守ることが「国」を守ることであろうと思うのです。つまり、単に国家という今の形式や名前を守ることが国を守っているのではなく日本の古来からの道を亡くさず、日本民族の初心やその生き方を守ることこそが「国」を守ることであろうと私は思います。

かつて五箇条の御誓文というものが明治時代に発行されました。これは改めて日本という国を再認識するために、武家や公家、全国民に対して発信されたものです。そこには日本民族の今までの生き方や、これからの在り方について改めて「国」の姿を再認識しようという意志が見えます。紹介すると、

五箇条の御誓文 

一、広ク会議ヲ興シ 万機公論ニ決スベシ

(広く会議を開いて、すべての政治は、世論に従い決定するべき)

一、上下心ヲ一ニシテ 盛ニ経綸ヲ行ウベシ

(治める者と人民が心をひとつにして 盛んに国家統治の政策を行うべき)

一、官武一途庶民ニ至ル迄 各其志ヲ遂ゲ 人心ヲシテウマサラシメンコトヲ要ス

(公家と武家が一体となり、庶民にいたるまで、志をとげ、人々の心をあきさせないことが必要)

一、旧来ノ陋習ヲ破リ 天地ノ公道ニ基クベシ

(古い悪習を破り 国際法に基づくべき)

一、智識ヲ世界ニ求メ 大ニ皇貴ヲ振起スベシ

(知識を世界に求め、おおいに天皇政治の基礎を盛んにすべき)

ここから日本民族が合和し、衆智を集め志を優先し心ひとつにして原点回帰するのだというようにも感じられます。これは私たちの先祖たちがどのような「国」のビジョンをもって取り組んできたか、私たちの民族が「国」と呼べるものがどのようなものであるかを再認識できるように思います。このように「国」を原点回帰したうえで次に今の日本憲法が策定されるのです。

当時の吉田茂首相はこう言います。

「日本の憲法は御承知のごとく五箇条の御誓文から出発したものと云ってもよいのでありますが、いわゆる五箇条の御誓文なるものは、日本の歴史・日本の国情をただ文字に表しただけの話でありまして、御誓文の精神、それが日本国の国体であります。日本国そのものであったのであります。この御誓文を見ましても、日本国は民主主義であり、デモクラシーそのものであり、あえて君権政治とか、あるいは圧制政治の国体でなかったことは明瞭であります」

つまり「御誓文の精神こそが日本の国そのものの本来の姿である」ということなのでしょう。日本人として守るのは、領土やGDPを守ることもいいのでしょうが本来の日本人というものをなくさないようにしていくことが国を世界で存続させる何よりも大切なことだと思います。グローバリゼーションによって、もはやどの国も同じように十羽一絡げになってきていますが改めて原点回帰することの大切さを感じます。

ますます国境が取り払われ、世界の中の一つの民族として活動するときが近づいてきています。私たち日本人の民は、これから世界の中でとても重要な役割を果たすように感じます。だからこそ日本人であることは、私たち自身だけではなく世界にとっても尊いことになっていきます。

これからも日本の心を持った人こそが最小単位の国であるとし、その国を大事にしていくことが国民を大事にしていくことだとして、子ども達に日本の精神を譲っていきたいと思います。